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LINTO日本語の校正と推敲

読めそうで読めない漢字 / 第59回

「稀有」は「けう」?「きゆう」?めったにないことを表す語

「稀有」は「けう」と読み、めったにない、非常に珍しいという意味です。「稀有な経験」なら、そう何度も得られない経験を指します。「きゆう」という読みも辞書に載っていますが、一般的な文章を読むなら「けう」を押さえておくと分かりやすくなります。

「稀有」と「希有」は同じように使える

「稀」には、まれである、少ないという意味があります。「有」と合わせた「稀有」は、あることがまれという意味です。「希有」と書くこともあり、こちらも同じ語として辞書に載っています。

「稀」の音は「き」なので、「きゆう」と読めそうに見えるのは自然です。実際にその読みもあります。ただし「杞憂」も「きゆう」と読むため、音だけで伝えると、取り越し苦労の話と混ざることがあります。「稀有な存在」を「けうなそんざい」と読むと、その紛らわしさを避けられます。

「稀有」と「希有」のどちらかだけが正しい、と考える必要はありません。文章全体で表記をそろえることはできますが、他方を一律に誤字と扱わないほうが正確です。

「珍しい」よりも強く響く場面

「稀有」は、めったに存在しないこと、めったに起こらないことを表します。 「珍しい店を見つけた」より「稀有な店を見つけた」のほうが、同じような店がほとんどないという強い評価に聞こえます。

「作り手と修理をする人が、同じ場所で話せる稀有な機会だった」という文では、普段はそろいにくい人たちが集まったことに価値を感じています。「三世代の演奏家が同じ舞台に立つ、稀有な公演」という紹介も自然です。

ただし、「この日は珍しく雨が降った」を「稀有な雨が降った」と言い換えると、雨の種類が特別だったようにも読めます。日常的な出来事を何でも大きな言葉に置き換えれば、文章がよくなるわけではありません。珍しさの程度と、何を珍しいと見ているかが重要です。

「稀少」「貴重」とは何が違う?

「稀少」は、数が少なく珍しいことです。「稀少な資料」は、同種の資料があまり残っていないという意味になります。「稀有な資料」なら、存在そのものや内容の珍しさが強調されます。二語は重なりますが、少なさに注目するなら稀少が使いやすい場合があります。

「貴重」は、大切で価値が高いことです。毎日得られる家族との時間を「貴重な時間」と言えますが、毎日あるなら、その頻度について「稀有」とは言いにくいでしょう。珍しいから価値がある場合はあっても、珍しさと価値は同じものではありません。

「稀有な才能」という褒め言葉は、その才能を持つ人がめったにいないという評価です。「貴重な助言」は、何人から受けたとしても、役に立ち大切な助言だといえます。褒めたいときにも、どの点を評価しているかで選べます。

人を「稀有な存在」と紹介するとき

「彼は稀有な存在だ」とだけ書くと、何が特別なのかは伝わりません。「作品の制作と古い作品の修復の両方を長く手掛ける、稀有な存在だ」とすれば、珍しい理由を示せます。比較の根拠が確かでないなら、「両方を手掛ける人だ」と事実を述べるだけでも十分です。

「誰に対しても態度を変えない、稀有な人だ」という表現もできます。ただし、ほかの人にはできないとまで評価する強さがあります。相手の長所を伝えるために、周囲の人を暗に下げてしまっていないか、文脈を見て使いたいところです。

また、古い文章では、稀有が不思議さや思いがけなさを表す場合もあります。現代の「とても珍しい」だけでは読みにくいときには、前後の文を確かめられます。「けう」という読みを覚えたうえで、その文が数の少なさ、機会の珍しさ、人物の特徴のどれを表しているのかを見ると、言葉の強さもつかめます。

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