読めそうで読めない漢字 / 第54回
「蓋然性」は何と読む?「可能性がある」と同じではない理由
「蓋然性」は「がいぜんせい」と読みます。あることが起きる、あるいは本当だと考えられる確かさの度合いです。「蓋然性が高い」なら、そう考えるだけの理由があり、実際にそうである見込みが高いという意味になります。ただし、確定した事実と同じではありません。
「起こり得る」より「どのくらい確からしいか」
「可能性がある」は、そのことが起こり得る、実現し得るという言い方です。「蓋然性」は、起こりそうか、本当らしいかという確からしさに注目します。可能性と蓋然性は重なる部分がありますが、蓋然性は特に「確かさの度合い」を表します。
たとえば「資料が別の倉庫にある可能性がある」なら、まだ候補の一つです。「移動記録と担当者の証言が一致しており、資料が別の倉庫にある蓋然性は高い」とすると、複数の根拠から有力と考えていることが伝わります。
もっとも、「可能性が高い」にも見込みの大きさを述べる使い方があります。「可能性は根拠がないとき、蓋然性は根拠があるとき」と絶対的に分けるのは適切ではありません。日常的な説明なら「その倉庫にある可能性が高い」で十分に通じる場面も多くあります。
「蓋」と「然」はどういう意味?
「蓋」は「ふた」と読む字ですが、「おそらく」「たぶん」と推し量る意味にも使われます。「然」は、そうであることを表す字です。「蓋然」は、確実とは言い切れないが、そうであると考えられるという意味につながります。
その性質や度合いを表すのが「蓋然性」です。「概要」の「概」と形や音の印象が近いため混ざりやすいのですが、ここは草冠の付いた「蓋」を使います。「概然性」と書くのではありません。
「蓋然的」という形なら、「ある程度確かだと考えられる」という意味になります。ただ、普段の案内文に無理に使う必要はありません。「これまでの記録から、その時期に完成したと考えられます」と書いたほうが、読み手に判断の内容を直接伝えられます。
「必然」「確実」とはどこが違う?
「必然」は、必ずそうなり、それ以外にはあり得ないことです。「蓋然性が高い」は、確からしいけれど、別の可能性が完全に消えたとは限りません。「毎年この時期は混むため、今回も混雑する蓋然性が高い」と言っても、必ず混むと断定したことにはなりません。
「確実に混む」と言い切る場合より、判断に幅を残しています。一方、「何となく混みそうな気がする」を難しく言い換えるだけで使うと、実際以上に根拠のある分析に見えます。語の堅さが、そのまま証拠の強さになるわけではありません。
「蓋然性が低い」「蓋然性に乏しい」も使えます。「目撃した場所が離れすぎており、同じ人物だったという説明は蓋然性に乏しい」といえば、その説明は確からしいとは考えにくいという意味です。絶対に違うと断言する文とは区別できます。
使うなら根拠と対象をはっきりさせる
「実現の蓋然性が高い」とだけ書かれていても、何を根拠にしているか分かりません。「会場と出演者の予定が確保されているため、予定どおり開催できる見込みが高い」なら、難しい語なしで同じ判断を具体的に説明できます。
「古い写真の建物が、この店である蓋然性は高い」という文なら、「窓の数と看板の位置が一致する」と続けると、読者も根拠を確かめられます。逆に、確認できない部分が残るなら「撮影年は不明で、同じ建物かどうかは断定できない」と添えられます。
蓋然性を何パーセント以上と一律に決めることはできません。分野や判断の目的によって使い方が異なり、一般の文章では必ずしも数値化されていません。「高い」と書くときほど、何がどこまで分かっているのかを説明すると、この言葉が持つ慎重さを生かせます。