正しい敬語 / 第89回
「おかげさまで」は何のおかげ?直接助けていない相手にも使える?
「おかげさまで」は、周囲の助けがあってよい結果になったことを伝える言葉です。直接何かをしてもらった相手だけでなく、近況を気遣ってくれた人への返事にも使えます。
「最近はいかがですか」と聞かれ、「おかげさまで、元気に過ごしております」と答えるのは自然です。相手に自分の健康への具体的な貢献がなければ使えない、ということではありません。
近況への返事では挨拶として使える
おかげさまで、引っ越しも無事に済みました。お気に掛けていただき、ありがとうございます。
相手が引っ越しを手伝っていなくても、気遣いを受けた返事として使えます。周囲に支えられている気持ちを控えめに表しながら、結果を報告しています。
まだ落ち着いていないなら、「ありがとうございます。片付けは残っていますが、生活には慣れてきました」と、そのまま近況を話せます。「おかげさまで」を付けるために、実際より順調だと装う必要はありません。
目上の人にも同僚にも使えます。親しい相手なら「おかげさまで、無事に終わりました」、改まった相手なら「おかげさまで、予定どおり終了いたしました」と、後ろの文を会話の調子に合わせられます。
助けてもらった人には内容を続ける
具体的な助力があった場合、何に感謝しているかを示すとお礼が伝わります。
おかげさまで、予定していた日に展示を始められました。搬入の時間を調整していただき、本当にありがとうございました。
結果だけでなく、相手がしてくれたことへのお礼を添えた例です。「おかげさまで成功しました」だけより、どの助けが役立ったかが分かります。
ただ、複数の人が関わった仕事を、一人のおかげだけと表現すると不正確になることもあります。「皆様のお力添えにより」「会場の方々にもご協力いただき」と、実際の関係に合わせて言えます。
「おかげさまで」で結果を報告し、具体的な感謝はその人がしてくれたことへ向けます。
悪い結果につなぐと皮肉に聞こえる
「おかげさまで、ひどい目に遭いました」と言えば、通常は相手の行為を責める皮肉として読まれます。「おかげ」の好ましい意味と、後ろの悪い結果が食い違うためです。
遅れを説明したいだけなら、皮肉を交えずに事実を伝えられます。
昨日の資料変更に伴い、提出が1日遅れる見込みです。新しい日程をご相談できますか。
誰かの対応が原因であっても、「あなたのおかげで」と言うより、出来事と影響を分けた方が話し合いやすくなります。逆に、悪い状況の中でも助けがあったなら、「ご連絡いただいたおかげで、出発前に変更を確認できました」と、よかった部分を具体的に示せます。
「おかげさまで」と「そのため」は同じ因果関係のつなぎではありません。感謝の気持ちを含めたい結果なのかを確かめます。
お礼を受けた側はどう返す?
「おかげさまで無事に終わりました」と言われたら、「それはよかったです。お知らせいただき、ありがとうございます」と、相手の結果を喜ぶ返事ができます。
無事に開催できたとのこと、何よりです。準備を重ねていらっしゃったので、よい会になってうれしく思います。
手伝った範囲が小さくても、「何もしていません」と強く否定する必要はありません。お礼を受け止めつつ、相手自身の取り組みに言葉を向けられます。
「全部あなたの努力です」と感謝を押し返すより、「お役に立てたのでしたらうれしいです」と短く答えることもできます。感謝の割合を決める会話にせず、報告してくれた気持ちを受け取れます。