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LINTO日本語の校正と推敲

間違えやすい日本語 / 第100回

「忖度」は悪いこと?気持ちを察することと便宜を図ることの違い

「相手の事情を忖度した」と書くと、不正な便宜を図ったように読まれるのでしょうか。「忖度」の中心は、他人の気持ちや考えを推し量ることです。言葉自体が必ず不正を意味するわけではありません。 ただ、誰の意向を察し、何をしたのかによって、受け取られ方は変わります。

本人が言っていないことを推し量る

「返事の短さから、相手は急いでいるのだろうと忖度した」。この場合、相手が明言していない事情を考えています。「作者の意図を忖度する」なら、文章などを手掛かりに、作者が何を意図したかを読み取ろうとすることです。

相手が「急いでいます」とはっきり言った場合、その内容をそのまま受け取るだけなら、わざわざ「忖度」と呼ぶ必要はありません。「事情を聞いた」「希望を確認した」と言う方が正確です。

推し量ることなので、考えた内容が本当の気持ちと一致するとは限りません。察したつもりで決めず、必要な場面では「こちらを先に進めてよいですか」と確認することもできます。忖度は、相手の心を確実に理解することではありません。

権限のある人への配慮が問題になる文脈

ニュースなどでは、上の立場の人の意向を推し量り、その人に有利になるように行動する場面で「忖度」が使われます。明確な指示がなくても、相手が望みそうなことに合わせて扱いを変えたのではないか、という問題です。

たとえば、「責任者の意向を忖度し、不都合な意見を資料から外した」という文なら、察したことだけでなく、その後の行為が批判の対象になっています。「忖度した」と一語で書くより、何を省いたのかを示す方が問題も明確です。

一方、「責任者の意向を確認して資料を修正した」なら、明言されていない考えを推し量ったのではなく、実際の指示や確認があったということです。「確認した」と「忖度した」は、出来事の説明として入れ替えられません。

親切を褒めたいなら具体的な気遣いを伝える

「荷物が多そうだったので、相手の気持ちを忖度して席を空けた」という文は、広い意味では成り立ちます。ただ、日常の親切を伝えるだけなら、「荷物を置けるように、席を空けた」の方が自然で具体的です。

「忖度ができる人です」と人物を褒めると、周囲の顔色を見て動く人という印象になることもあります。気配りを評価したいなら、「相手が話し終えるのを待ってから質問する」「困っている人に先に声をかける」と行動で示せます。

「察する」「気を配る」「配慮する」は近い言葉ですが、意味が全部同じではありません。「察する」は気持ちなどを読み取ること、「配慮する」は事情を考えて心を配ることです。読み取った話なのか、実際に工夫した話なのかを分けると、言い換えも選びやすくなります。

「忖度なし」は正しさを保証する言葉ではない

「忖度なしで感想を言います」と言えば、相手に気兼ねせず率直に話すという意図は伝わります。しかし、その後の感想が客観的で正しいことまで保証するわけではありません。単に自分の好みを述べている場合もあります。

「忖度なしで最低でした」とだけ書くより、「説明が途中で省かれており、初めて読む人には手順が分かりにくいと感じました」と理由を示せます。率直に言うことと、強い言葉で断定することは別です。

反対に、相手への配慮がある発言を、すべて不誠実な忖度と呼ぶのも行き過ぎです。気遣いながら正確に指摘することはできます。「意向を推し量った」「不公平な扱いをした」「率直な感想を述べた」を分けて考えると、「忖度」という語に多くを背負わせすぎずに済みます。

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