間違えやすい日本語 / 第95回
「ついに」と「とうとう」はうれしいときだけ?結末で変わる語感
「ついに店が閉まった」「とうとう夢がかなった」。どちらも自然な文です。「ついに」と「とうとう」は、経過を経て最終的な結果に達したことを表し、よい結果にも悪い結果にも使えます。 「ついに」は喜び、「とうとう」は残念なこと、と決めて使い分ける必要はありません。
達成した喜びにも恐れていた結末にも使える
「何度も挑戦して、ついに決勝へ進んだ」。待ち望んだ結果が実現したことを伝えています。「とうとう決勝へ進んだ」と替えても成り立ち、長く取り組んできた末の達成感が読み取れます。
逆に、「何度も修理して使ってきた時計が、ついに動かなくなった」も自然です。「とうとう動かなくなった」としても意味の中心は同じです。壊れそうだった状態が続き、最後にその結果へ至ったことを表します。
どちらが合うかは、よい悪いだけでなく文章の調子にもよります。「ついに」は改まった説明や見出しにもなじみ、「とうとう」は会話で気持ちを込めて使いやすい語です。ただし、厳密な文体の境界ではなく、両方を選べる文も多くあります。
何も起きなかった結末にも使える
「待ち続けたが、返事はついに来なかった」。この文は、最後の時点で返事が届いたのではなく、最後まで届かなかったという意味です。「とうとう会えなかった」「ついに理由は分からなかった」も成り立ちます。
ここでは、実現を待つ時間や確かめようとする経過があり、その終わりまで状態が変わらなかったことを伝えています。単に「まだ返事がない」と書く場合より、待つ期間が終わった感じが強くなります。
現在も返事を待っているなら、「今のところ返事はありません」の方が状況に合うことがあります。「ついに来なかった」と過去形で結ぶと、もう返事は来ないと判断したようにも読まれるためです。
「いよいよ」と「結局」はどこが違う?
「いよいよ明日から展示会が始まる」は、これから迎える時点を表せます。一方、「とうとう明日始まる」と言えば、長く待ってきて、始まる直前まで来たという気持ちが強くなります。同じ予定でも、何に目を向けるかが違います。
「結局、開催を見送った」は、さまざまな経過があった末の結論を述べる文です。「ついに開催を見送った」とすると、開催をやめる事態へ最終的に至ったことが強調されます。「結局」は、期待や待ち続けた時間がなくても、検討の結論をまとめるのに使えます。
たとえば、二つの会場を一時間ほど比べて一方に決めたなら、「結局、駅に近い方を選びました」で十分です。「ついに」を使うと、そこへ至るまで大きな障害や長い経過があったように感じられる場合があります。
報告で不要な感情を足していないか
「支払いがとうとう完了しました」と受け手に届いたら、長く滞っていた支払いをようやく済ませたように聞こえることがあります。通常の期日に処理しただけなら、「支払いが完了しました」で用件は伝わります。
「ついに返信がありました」も、待ち望んでいたという書き手の気持ちが加わります。その気持ちを伝えたい会話では役立ちますが、単に連絡が届いた時刻を共有するなら「本日、返信が届きました」と書けます。
反対に、長い取り組みを紹介する記事なら、「三回の延期を経て、ついに公開した」と具体的な経過を添えると、「ついに」が生きます。「とうとう完成した」と書く場合も、何を待ち、何が難しかったのかがあれば、読者は結果の重みを理解できます。
うれしいか残念かは、後ろの出来事や前後の文章が決めます。副詞一つに感情を固定せず、結果へ至る時間を伝えたいのか、事実だけを知らせたいのかで選べばよいのです。