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LINTO日本語の校正と推敲

間違えやすい日本語 / 第94回

「失敗したおかげで」は間違い?「せい」と「おかげ」の使い分け

「失敗したおかげで、準備の弱点に気づけた」。悪い出来事に「おかげ」を使っていますが、間違いではありません。「おかげ」は、あることがよい結果につながったと見る言葉。「せい」は、よくない結果の原因を示す場面に多く使われます。 原因そのものより、どんな結果として捉えているかが分かれ目です。

悪い出来事でも結果をよく捉えれば「おかげ」

「雨が降ったおかげで、庭の水やりをせずに済んだ」。外出する人には困る雨でも、この文では手間が減ったことをよい結果としています。「雨だから『せい』でなければならない」という決まりはありません。

「予定の店が休みだったおかげで、別の店を見つけられた」も同様です。休業を喜んでいるのではなく、そこから生じた結果を前向きに捉えています。「失敗したおかげで学べた」も、この使い方です。

ただし、つらい出来事を経験した本人がそう振り返ることと、周囲が本人に「失敗したおかげですね」と言うことは別です。まだ困っている相手へ、よい結果だったと決めつけると、気持ちや損失を軽く見たように伝わることがあります。

「せい」は責任を押し付ける意味になりやすい

「雨のせいで試合が中止になった」は、望ましくない中止の原因を雨に置く文です。「寝不足のせいで集中できなかった」なら、自分の状態が原因だと考えています。「せい」は他人を責めるときだけの言葉ではありません。

ただ、人を原因にすると非難の意味が強くなりやすくなります。「あなたのせいで遅れた」と言えば、相手に責任を負わせる文です。遅れた原因が複数あるのに、一人だけのせいにしていないかも確かめたいところです。

事実を説明したいなら、「出発前の確認に時間がかかり、予定より遅れました」と経過を書けます。誰に責任があるかを論じる必要がある場合も、まず何が起きたかを示す方が、話が食い違いにくくなります。

「おかげで大迷惑」は感謝ではなく皮肉

「あなたが何度も予定を変えてくれたおかげで、大変でした」。表面には「おかげ」「くれた」という、恩恵に関わる形がありますが、後半は困った結果です。この食い違いによって皮肉になります。

「おかげ」を使えば丁寧に不満を言える、というわけではありません。直接「困りました」と伝えるより、かえって強い嫌味に聞こえる場合もあります。皮肉として言ったつもりでなくても、結果が悪い文と結び付くとそう読まれやすくなります。

困ったことを伝えるなら、「日程が変わるたびに予約の取り直しが必要でした。次回は確定後に知らせてもらえますか」と、負担と依頼を分けられます。「おかげ」を別の単語に替えるだけでなく、何を改善してほしいかまで書く方法です。

原因だけを述べたいなら「ため」「影響で」

よいとも悪いとも評価せず、原因や関係を述べたい場合は「ため」「影響で」などが使えます。「工事のため、入口が変わります」「強風の影響で、到着が遅れています」のような案内です。

ただし、原因が確定していないなら、接続表現だけを替えて断言しないようにします。「寝不足のせいか、今日は集中しにくい」の「か」は、原因を推し量っていることを示します。「寝不足のためです」と言い切ると、確かさが変わります。

お礼を伝えるなら、「説明してもらったおかげで、迷わず申し込めました」のように、どんな助けがどの結果につながったかを添えると具体的です。単に「あなたのおかげです」と言うより、何に感謝しているかが伝わります。

「せい」と「おかげ」は、出来事の一覧をよい原因と悪い原因に分ける言葉ではありません。同じ出来事を、誰が、どんな結果として語っているかを見ながら選ぶ表現です。

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