間違えやすい日本語 / 第147回
「是非を問う」はお願いではない?「可否」との違いも確認
「参加の是非を教えてください」と届いたら、参加するかどうかを返せばよいのでしょうか。それとも、参加すべきか意見を求められているのでしょうか。名詞の「是非」はよいか悪いか、「可否」はよしあしや賛否を表し、実務では可能かどうかを尋ねる場面にも使われます。 問い合わせでは、何を答えてほしいかを具体的にすると確実です。
「是非を問う」はよいかどうかを考える
「開催の是非を検討する」は、開催することが適切かどうかを考える意味です。会場が空いているかだけでなく、目的や負担を踏まえ、開催すべきかを議論する文になります。
「この制度の是非を問う」「実施の是非について意見を求める」も同じです。単に実行する能力があるかを確認するのではなく、よい選択かどうかを判断することが中心です。
「是々非々」は、立場にかかわらず、よいものをよい、悪いものを悪いと判断する意味です。「是非」の「是」と「非」を分けて考えると、よしあしに関わる語だと分かりやすくなります。
「可否」も可能・不可能だけではない
「可否」は、よいかよくないか、賛成か反対かという意味を持ちます。「議案の可否を決める」は、議案を認めるか否かを決める文です。「可否は半々だった」なら賛否が分かれたと読めます。
日常の連絡では、「対応の可否」「使用の可否」のように、できるかどうか、使ってよいかどうかを表す場面にも使われます。したがって、「可否は能力だけ、是非は道徳だけ」と完全に分ける説明は狭すぎます。
大切なのは、何について可か否かを求めているかです。「使用の可否をご連絡ください」なら、設備として使用できるのか、許可するかを尋ねているのかを、前後の条件で明らかにします。
出欠なら「参加できますか」と聞いてよい
「参加の是非」という言い方は、参加すべきかどうかの判断を求める文として成立します。しかし、出席者を数えたいだけなら、少し回り道になります。
「参加できるかどうか、金曜日までにお知らせください」「出席・欠席のいずれかをご回答ください」と書けば、返す内容が明確です。「参加の可否」も使えますが、必ず熟語にしなければ丁寧でないということはありません。
相談の目的が別なら、そこも分けます。「参加者を募るべきか、ご意見をください」は企画の判断、「当日参加できますか」は本人の予定です。同じ参加という語があっても、求める返事が違います。
| 確かめたいこと | 伝わりやすい聞き方 |
|---|---|
| 開催することが適切か | 開催すべきか、ご意見をください。 |
| 相手が参加できるか | 当日参加できますか。 |
| 会場を使ってよいか | この用途で会場を使用できますか。 |
副詞の「ぜひ」は強い希望を表す
「ぜひ参加したいです」の「ぜひ」は、よしあしを議論する名詞ではありません。強い希望を表す副詞です。「ぜひお越しください」なら、来てほしい気持ちを伝えています。
「ぜひ検討してください」と頼めば、検討してほしいという希望です。「是非を検討してください」なら、よいか悪いかを考えてほしいという文になります。「を」があるかどうかで、言葉の働きが変わります。
副詞は、読みやすく「ぜひ」とひらがなで書いて構いません。名詞の「是非」は「実施の是非」のように漢字で書くと意味を捉えやすくなります。
二つの熟語を厳密な順位や丁寧さで選ぶより、相手に何を判断してほしいかを考えます。よしあし、賛否、能力、予定、許可。そのどれを尋ねているかが分かれば、返事も行き違いにくくなります。