間違えやすい日本語 / 第148回
「対象」「対照」「対称」はどう違う?比較する二つはどの漢字?
「二つの案をたいしょうして見る」と書くときは、比較する「対照」です。「対象」は何に向けるか、「対称」は形などがつり合う関係を表します。比較されるものは「対象」、照らし合わせる行為は「対照」、左右などの対応は「対称」です。 同じ文に複数が出ることもあります。
「対象」は行為や関心を向ける先
「初心者を対象にした講座」は、初心者に向けた講座です。「調査の対象を選ぶ」「関心の対象になる」のように、何に向かう行為なのかを示します。
「比較対象」は、比較される相手やものです。「昨年の案を比較対象にする」なら、昨年の案と今回の案を比べるという意味になります。「比較対照」と書くと、二つを照らし合わせる行為として読まれるため、何を言いたいかを見ます。
案内の「対象者」も、この字です。たとえば「会員が対象です」と書くと、会員なら全員を含むように読めます。一部に条件があるなら「今年度登録した会員が対象です」と範囲を示します。漢字を正しく選んでも、対象の範囲が曖昧なままでは誤解が残ります。
「対照」は照らし合わせて比べること
「原文と訳文を対照する」は、二つの文を照らし合わせて確かめることです。「旧版と新版の対照表」なら、変更点を比べやすく並べた表になります。
「対照的な性格」のように、並べたときに違いが際立つ場合にも使います。「慎重な姉と、思い立ったらすぐ動く弟は対照的だ」という文です。正反対でなければ使えないというほど狭い語ではありませんが、何が違うかがあると伝わります。
「対比」も比較に関わる語ですが、違いを明らかにするため並べる場合に使われます。「比較」はさらに広く、二つ以上を比べる行為全般に使えます。迷ったら「昨年と今年を比較する」のように、無理なく言える表現を選べます。
「対称」は対応しながらつり合う関係
「左右対称の模様」は、左右が対応した形になっていることです。「右と左が大きく違う」という意味で「左右対称」と書くのは逆になります。
二人の性格が大きく違うなら「対照的」、左右の形がつり合うなら「対称的」です。「二人は対称的な性格だ」と書くと、一般に言いたい「対照的」と混ざっている可能性があります。
図形では線対称や点対称など、対応する関係に応じた言い方があります。日常の説明なら、「真ん中で折ると左右が重なる形」のように具体化する方法もあります。ただし、見た目が似ているだけで厳密な対称といえるかは、図の条件によって確かめます。
一つの例で三つを使い分ける
「左右対称の二つの図を比較の対象とし、色の違いを対照表にまとめた」。一文に三つがあっても、それぞれの役割は違います。図の形は対称、比べる図は対象、比べた結果を並べる表は対照表です。
変換候補だけを見て迷ったら、「何を比べるか」「比べる行為」「形の関係」のどれなのかに戻ります。「たいしょうにする」なら、調査などの相手にする意味で「対象にする」が多くなります。
| 文の内容 | 表記 |
|---|---|
| 案内を届けたい人 | 対象者 |
| 新旧を並べて確認する表 | 対照表 |
| 左右が対応する形 | 左右対称 |
漢字を直した後も比較の中身を見る
「両者は対照的です」とだけ書いても、費用なのか性格なのか分かりません。「一方は費用を抑えやすく、他方は準備時間を短くできます」と比べる点をそろえると、違いが具体的になります。
「対象外です」という案内も、何の対象から外れるかを添えると親切です。「今回の割引は対象外です」ではなく、「この商品は今回の割引の対象外です」と書けば、対象と条件の関係が分かります。漢字の選択と一緒に、文の中の関係も確かめたいところです。