正しい敬語 / 第22回
「できかねます」で断っても失礼ではない?「できません」との違いと言い換え
「できかねます」は、できないことを改まって伝える言い方です。取引先やお客様への返答にも使えます。「少し難しいが、交渉すればできる」という保留の意味ではありません。
一方、「できません」も丁寧語です。断る文では、語尾の丁寧さに加えて、何ができないのかをはっきりさせます。
「できかねます」と「できません」の違い
小学館『デジタル大辞泉』の「兼ねる」には、ある動作をすることが難しい、できないという用法があります。「お答えしかねます」「判断しかねます」もこの使い方です。
「できません」は判断を端的に伝え、「できかねます」は改まった断りの響きになります。ただし、後者を選べば必ず柔らかくなるわけではありません。「それはできかねます」だけでは、取り付く余地のない返事に感じられることもあります。
たとえば、即日の発送を求められたとき。「本日の発送はできません。明日午前の発送でしたら承れます」と答えれば、対応できる範囲まで伝わります。語尾を長くするより、相手が次に判断できる情報を加えるほうが有効な場面です。
断る理由は今回の依頼に必要な分だけ
「ご希望の色は在庫がないため、本日の発送はいたしかねます。別の色でしたら本日発送できます」のように、理由と代案がつながっていると、選び直しやすくなります。
反対に、代わりの方法がないのに「別途検討いたします」と付け足すと、相手は回答を待つことになります。受付を終了しているなら、「受付期間を過ぎているため、今回はお申し込みを承ることができません」と範囲を絞って断れます。
長い事情説明も必須ではありません。相手に関係しない社内の都合まで並べると、言い訳のように読まれかねません。対応の可否を理解するための理由にとどめます。
まだ確認していないなら「できかねます」で閉じない
担当者に確認すれば分かる段階では、「ただいま確認しております。明日正午までに回答いたします」と、確認中であることを伝えます。「分かりかねます」で返事を終えると、それ以上調べるつもりがないように聞こえる場合があります。
なお、「対応できかねません」は別の注意が必要です。「かねない」は好ましくないことが起こる可能性を表すので、「できない」を丁寧にしたつもりで重ねると意味が取りにくくなります。断るなら「対応いたしかねます」か「対応できません」で十分です。