正しい敬語 / 第20回
「すみません」と「ありがとうございます」の使い分けは?助けてもらったときのお礼
資料を届けてもらい、思わず「すみません」と言う。これは、必ずしも謝罪だけではありません。相手に手間をかけたという気持ちを込めて、お礼として使うこともできます。
感謝の「すみません」は誤用ではありません。お礼をはっきり伝えたいときは、「ありがとうございます」を添えたり、そちらを選んだりできます。
お礼に「すみません」と言ってもよい?
小学館の『デジタル大辞泉』でも「すみません」は、謝罪だけでなく、感謝や依頼に使う言葉とされています。相手がわざわざしてくれたことを受けて「すみません」と返すのは、日本語の使い方として成り立ちます。
たとえば、忘れた資料を同僚が持ってきてくれたときの「わざわざすみません」には、手間をかけた気持ちと感謝の両方を込められます。「感謝なのだから謝罪語は絶対に使わない」という規則にする必要はありません。
ただ、言葉だけでは恐縮の方が前に出ることもあります。助かったことを明確に伝えるなら、次のように言えます。
届けてくださって、ありがとうございます。打合せに間に合いました。
相手がしてくれたことと、その結果を一緒に伝えたお礼です。事実に合う一言があれば、定型の「ありがとうございます」に続けられます。
手間をかけたことと感謝を分ける
お手数をおかけしました。資料を届けてくださって、ありがとうございます。
最初の文で負担に触れ、次の文でお礼を伝えています。両方の気持ちがあるなら、どちらか一つに絞る必要はありません。
これに対して、ただ物を手渡してもらった場面なら「ありがとうございます」だけでも十分です。特別な手間をかけたわけではないのに、長いおわびを足す必要はありません。相手との関係に合わせて、「ありがとう、助かりました」と短く伝えられる場面もあります。
自分の失敗を助けてもらったとき
こちらが会議の時刻を伝え間違え、相手が予定を調整してくれた場合は、感謝だけに置き換えない方が用件に合います。
時刻を誤ってお伝えし、申し訳ありませんでした。ご予定を調整いただき、ありがとうございます。
伝え間違いへの謝罪と、予定を変えてくれたことへの感謝です。「調整ありがとうございます」だけでは、誤った連絡へのおわびは出てきません。逆に、「申し訳ありません」を繰り返すだけでは、助けてくれたことへのお礼が伝わりにくくなります。