間違えやすい日本語 / 第116回
「画竜点睛を欠く」は小さなミス?最後の何が足りないのか
よくできた案内なのに、肝心の申込先がない。「画竜点睛を欠く」は、こうした欠落を指摘するときに使えます。全体はよくできていても、大切な一点が足りず、完成したものになっていないという意味です。 小さなミスなら何にでも当てはまるわけではありません。
「点睛」は最後に目を描き入れること
読みは「がりょうてんせいをかく」です。「睛」は目のひとみを表す字で、晴れの「晴」ではありません。「画竜点睛」は、竜の絵にひとみを入れて完成させるという故事から、大事な最後の仕上げをすることを表します。
そこに「欠く」が付くと、仕上げに必要な肝心の部分が欠けているという意味になります。「画竜点睛を欠く」の「欠く」は、足りないということです。「書く」と変換すると、意味がつながりません。
ただし、字を知っていることより、何が大事な一点なのかを説明できることが使う際には重要です。「画竜点睛を欠いている」とだけ言われても、読み手は直す場所を特定できません。
小さな欠点と肝心な不足は違う
展示会の案内で、見出しの字間が少し不揃いだったとします。それだけで参加者が迷わないなら、「見た目に少し調整の余地がある」と説明できます。常に「画竜点睛を欠く」とまで言う必要はありません。
一方、日時も魅力も伝わるのに会場名が書かれていないなら、案内として役目を果たせません。「内容は充実しているが、会場の記載がなく画竜点睛を欠く」と言える場面です。
短い記載だから重要でない、ということではありません。申込先の一行や、費用の一数字が欠けるだけで、読み手が行動できなくなることがあります。量の小ささと、役割の大きさは別です。
全体が未完成なものにも使える?
本文がほとんど書かれていない報告書を、「画竜点睛を欠く」と評すると不足を小さく見せてしまいます。仕上げの一部分だけでなく、土台から未完成だからです。
「主要な説明がまだ揃っていない」「結論に必要な資料が不足している」と書く方が、現状に合う場合があります。逆に、資料も考察も十分あるのに結論だけがないなら、「最後の判断が示されず、画竜点睛を欠く」という評価が成り立ちます。
作品への感想で「惜しい」と言いたいときにも、どの程度完成しているものかを確認します。何となく満足できなかったという気持ちを、必ずこの語で説明できるわけではありません。
指摘の文には何が必要かを添える
「発表は分かりやすかったものの、比較の基準が示されず画竜点睛を欠いた」。この文なら、よかった点と足りない点が分かります。聞き手が同じ結論を確かめるために、比較の基準が必要だったという説明も続けられます。
相手へ修正を頼むなら、「申込先のリンクを最後に加えてください」のように直接伝える方法もあります。難しい慣用句を使うことが、丁寧な指摘になるわけではありません。
また、受け手がまだ修正途中だと説明しているなら、「画竜点睛を欠く作品だ」と完成品の評価のように書かず、「申込先を加えれば、案内として必要な情報が揃います」と伝えられます。現時点の不足と、完成後の評価を混ぜないためです。
「蛇足」とは足りないか余計かが違う
「画竜点睛を欠く」は必要な部分がないこと、「蛇足」はなくてもよい部分を付け加えることです。「説明が長すぎて画竜点睛を欠く」と書くと、長さと欠落の関係が分かりにくくなります。
長い説明のせいで結論が抜け落ちたなら、「説明は詳しいが、結論がなく画竜点睛を欠く」と書けます。結論も必要な内容もあるが余談が多いだけなら、「余談が長く、要点を追いにくい」で足ります。
直すために必要なのが追加なのか削除なのかを見分けると、この二つの語を取り違えずに済みます。