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LINTO日本語の校正と推敲

間違えやすい日本語 / 第110回

「言わずもがな」は言わない方がいい?二つの意味を見分ける

「言わずもがなのことを言う」と「味は言わずもがな、見た目もよい」。同じ言葉なのに、前者は余計な発言、後者は当然の評価を表しています。「言わずもがな」には、言わない方がよいという意味と、言うまでもないという意味があります。 どちらか一方を誤りとする必要はありません。

「言わずもがなの一言」は余計な発言

「手伝ってくれて助かった。でも、少し遅かったね」。お礼の後に添えた言葉が相手を不快にしたとき、「言わずもがなの一言だった」と振り返ることがあります。言う必要がなかった、言わない方がよかったという意味です。

「言わずもがなのことを持ち出す」「言わずもがなの批評を加える」のように、「の」を付けて名詞を修飾する形でよく使われます。単に分かり切ったことを言っただけでなく、余計なことを言ってしまったという評価になりやすい表現です。

ただ、厳しい指摘であっても、相手の判断に必要なら言わずもがなとは限りません。伝えにくいことと、伝える必要がないことは別です。必要な指摘を避ける理由として使わないようにしたいところです。

「味は言わずもがな」は言うまでもなくよい

「この店は、料理のおいしさは言わずもがな、接客も心地よい」。料理がおいしいことは当然として、そのうえで接客も評価する文です。「もちろん」「言うまでもなく」と近い働きをしています。

ただし、初めてその店を知る読者には、料理がおいしいことがまだ共有されていません。「言わずもがな」とだけ置くと、知っている人向けの説明になります。「料理は香りがよく、接客も丁寧です」のように、初めから説明する方が役立つ場合があります。

「Aは言わずもがな、Bも」という形では、Aを既に認められているものとして扱います。その前提が読者にも通じるかが、使いやすさを左右します。

「言わずとも」とは同じ形で使えない

「言わずとも分かる」は、言わなくても分かるという条件の意味です。「言わずもがな分かる」と、そのまま入れ替える言い方ではありません。

「説明しなくても伝わるはずです」と言いたいなら、「言わずとも伝わるでしょう」と書けます。一方、「当然分かっていることだ」と強く前提にするなら、「言うまでもなく分かっていることです」と言えます。ただし、相手の理解を勝手に決めない方がよい場面もあります。

案内で「持ち物は言わずもがなです」と省くと、何を持参するのか分かりません。常連には当然でも、初めて来る人には必要な情報です。省けるかどうかは、書き手にとって既知かではなく、読み手に伝わっているかで考えます。

人の発言を「言わずもがな」と評する前に

「それは言わずもがなですよ」と直接返すと、当然のことを言わないでほしいのか、余計なことを言わないでほしいのか、判断しにくいことがあります。どちらでも、相手の発言を退ける響きがあります。

既に共有済みだと伝えるなら、「その点は確認済みです」。今の話題に関係しないなら、「その話は後で確認し、まず日程を決めましょう」と返せます。不必要に相手の言葉全体を低く評価しなくても、話を進められます。

自分の文章を見直す際には、「言わずもがなの一言を足していないか」という視点が役立ちます。「念のため言いますが、誰でも分かることです」の後半など、情報を増やさず相手を評価するだけの言葉は削れるかもしれません。

二つの意味を覚えたうえで、文の形と話の流れから読む。「言わない方がよい」のか、「言うまでもない」のかを具体的な文へ戻して考えると、見慣れない言い回しも取り違えずに使えます。

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