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LINTO日本語の校正と推敲

間違えやすい日本語 / 第105回

「もとより承知」は今分かったこと?「もちろん」との違い

「その点はもとより承知しています」と言われたら、今初めて分かったという意味ではありません。「もとより」には、初めから・以前からという意味と、言うまでもなく・もちろんという意味があります。 文の形によって、時間の話なのか、当然とする範囲の話なのかを見分けます。

「もとより知っていた」は以前から知っていたこと

「会場が狭いことは、もとより分かっていた」。計画を立てる前から、その条件を把握していたという文です。今説明されて初めて知った場面で「もとより承知しました」と書くと、時間の関係が合いません。

新しく分かったなら「承知しました」「説明を伺って理解できました」と返せます。以前から分かっていたことを丁寧に伝えるなら、「その条件は事前に確認しています」と具体的に書く方法もあります。

「失敗する可能性はもとより考えていた」という文は、失敗した後に初めて思い付いたのではないと示しています。ただし、考えていたことと、実際に十分な準備をしたことは別です。必要な報告なら、どんな備えをしていたかも続けます。

「子どもはもとより大人も」は範囲を広げる

「この絵本は、子どもはもとより大人も楽しめます」。子どもが楽しめることを当然の前提として、それだけでなく大人にも対象を広げている文です。この形では「もちろん」と近い意味になります。

「見た目はもとより、使いやすさにも配慮した」も、見た目だけでなく使いやすさも重視したという説明です。「もとより」の前後には、文の中で比べられる要素を置くと読みやすくなります。

「参加者はもとより、雨でも実施します」のように、人と開催条件をそのままつなぐと、どんな関係かが分かりません。「参加者の都合を確認したうえで、雨天の場合の対応も決めます」と分ければ、述べたい内容が整理できます。

「当然知っています」という響きが強くなる場面

確認してくれた相手へ「そんなことはもとより承知しています」と返すと、わざわざ言われるまでもない、という響きが加わることがあります。内容が正しくても、相手の確認を余計なものとして扱ったように聞こえる場合があります。

「ご確認ありがとうございます。その点は確認済みです」と返せば、既に知っていることを示しながら、相手の行動を否定せずに済みます。逆に、同じ確認が何度も続いて困っているなら、「前回のご連絡の時点で確認しています」と経過を明示できます。

「もとより」という語自体が失礼なのではありません。前後の「そんなこと」「当然」といった語や、相手が何のために確認したかが、受け取られ方に関わります。丁寧な単語を選ぶだけでは、文全体の調子は決まりません。

「もともと」「もちろん」へ替えるときの見方

「もとより参加するつもりだった」は、以前からの意向なら「もともと参加するつもりだった」と替えられます。「もとより賛成です」が当然の賛意を示すなら、「もちろん賛成です」が合うこともあります。

ただし、「もともと」は起源や初めの状態を表す場合もあります。「ここはもともと倉庫だった」は建物の来歴の話で、「もちろん倉庫だった」と替えると意味が違います。時間の前後と、当然だという評価を混ぜないことが大切です。

自分の文章が堅くなりすぎる場合には、「以前から分かっていました」「子どもだけでなく大人も楽しめます」と、意味をそのまま言う方法もあります。改まった文章で「もとより」を残す場合も、前半を当然とすることに無理がないかを確認します。

知らなかった相手を責めたいわけではないのに、当然の知識だと決めつけていないか。「もとより」を使うときは、何が以前からの事実で、何を当然として話を進めているかを確かめると、文の意図が伝わりやすくなります。

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