間違えやすい日本語 / 第107回
「批判」と「非難」はどう違う?意見を言うことまで悪口になる?
「批判しないでください」と言われると、改善点も言ってはいけないのか迷うことがあります。「批判」は、物事を検討して評価したり、誤りを指摘して論じたりすること。「非難」は、欠点や過ちを取り上げて責めることです。 反対意見を述べることが、すべて悪口になるわけではありません。
「批判」は悪い点を言うだけの言葉ではない
「資料を批判的に読む」は、資料の作者を嫌って読むという意味ではありません。根拠は確かか、説明に飛躍がないか、別の見方はあるかと検討する姿勢を表します。
「この案を批判する」という文では、案の問題点を指摘し、正すべきだと論じる意味になります。「費用の説明が抜けているため、このままでは判断できない」と述べるのは、内容についての批判です。
ただし、日常語としての「批判」には、否定的な意見という受け止め方もあります。「批判してください」と頼むより、「成立しない条件や見落とした点があれば教えてください」と具体化すると、求めている検討が伝わります。
「非難」は相手の過ちを責める
「約束を繰り返し破ったことを非難した」。この文では、行為の問題点を挙げるだけでなく、相手の責任を問い、よくないと責めています。「無責任な対応への非難が集まった」も同じ使い方です。
非難は、根拠のない悪口と同じではありません。実際に人を傷つけた行為や、明確な約束違反に対して非難が向けられることもあります。逆に、「批判」と名乗った発言が必ず理性的で適切だとも限りません。
「これは批判だから何を言ってもよい」と考えると、説明の対象が行為から人物全体へ広がりやすくなります。「連絡が遅かった」と「この人には価値がない」は別の話です。言葉の分類より、実際に何を述べているかを見ます。
指摘する対象を人全体に広げない
「この案では参加者の移動時間が考慮されていません」。案の問題を示す文なので、移動時間を加えて検討し直すことができます。「こんな案を出す人は何も考えていません」と書くと、人の能力や態度まで推測して否定しています。
「説明が分かりにくかった」も、どの部分かを示せます。「申込先が本文の途中に埋もれていて、見つけにくかった」と言えば、読み手の体験と改善できる点がつながります。
ただし、改善案を必ず出さなければ批判できないわけではありません。安全上の不備など、解決方法が分からなくても指摘する必要がある問題はあります。自分に代案がないことを理由に、分かっている問題まで黙る必要はありません。
意見を受け取る側も内容と調子を分ける
強い口調で言われると、すべて非難だと退けたくなることがあります。それでも、言い方が厳しいことと、指摘された問題が存在することは両立します。「言い方はつらかったが、日程の説明が不足していた点は直す」と分けて考えられます。
逆に、丁寧な文だから内容も正しいとは限りません。「ご経験が足りないのではないでしょうか」と丁寧に書いていても、根拠なく能力を決めつけている場合があります。敬体かどうかだけで判断しないことが必要です。
返事をするときは、「ご指摘のとおり、費用の内訳が不足していました。追記します」と、確認できた点に答えられます。同意できない部分は、「移動時間は別紙に記載しています。ただ、本文から分かりにくかったため案内を加えます」と説明できます。
「批判」「非難」のどちらかに分類して話を終えるより、指摘の根拠、対象、直せる点を確かめる方が、内容のあるやり取りになります。賛成しないことと、相手を傷つけることを同じものにしないためにも、使う文そのものを見直したいところです。