間違えやすい日本語 / 第118回
「蛇足ですが」は付け足していい合図?補足との違いを考える
説明の最後に「蛇足ですが」と添えると、控えめに補足したように見えます。ただし、続く内容が重要なら、読まなくてもよい話だと受け取られるかもしれません。「蛇足」は、付け加える必要のないものです。 補足をへりくだって言う使い方はありますが、必要な情報に付けるかどうかは考えたいところです。
「補足」は足りない情報を補い「蛇足」は余計に足す
「受付は二階です。補足すると、エレベーターは建物の裏手にあります」。移動に必要な情報を加えているので、「補足」が合います。車いすや大きな荷物で来る人には、むしろ重要な案内です。
これを「蛇足ですが、エレベーターは裏手です」とすると、必要な人にも余談のように見えてしまいます。「補足」と「蛇足」は、付け加えるという点で似ていても、情報の必要性に対する評価が違います。
語の由来は、蛇の絵を描く競争で、先に描き終えた人が足まで描いて負けたという中国の故事です。よかれと思って足したものが、不要だったという意味につながっています。文章が長いことすべてを指すわけではありません。
自分の話を控えめに付け足す使い方
「蛇足ですが、この建物の裏には小さな庭があります」と紹介する場合、主な説明ではないことを控えめに示す意図は伝わります。会話の流れに余裕があり、相手が興味を持ちそうなら、使ってはいけない言い方ではありません。
ただ、「蛇足ですが」と毎回前置きすると、何を中心に読めばよいか分かりにくくなります。関連のある小話なら「ちなみに」、必要な追加情報なら「補足すると」、新しい用件なら「もう一点」と、役割に合う語を選べます。
「ちなみに」も、何を続けてもよい合図ではありません。本文の理解に不可欠な条件を、余談の調子で隠さないことが大切です。「ちなみに、申し込みは今日までです」は、締切を重要な案内として別にはっきり示した方がよい文です。
必要かどうかは読み手の目的による
初めて来る人への案内では、駅からの道順が必要です。何度も来ている担当者への日程確認なら、その長い道順は不要かもしれません。同じ情報が、相手や文書の目的によって補足にも蛇足にもなります。
「申込先だけ知りたい」という問い合わせに、催しの歴史を長く返すと、必要な答えが見つけにくくなります。まず申込先を示し、歴史に関する説明が本当に必要かを考えます。
一方、判断の根拠を求められているのに、結論だけに削ると説明不足になります。短ければ蛇足がない、長ければ蛇足があるという関係ではありません。読み手が知りたいことに役立っているかが基準です。
人の説明を「蛇足」と評するときの強さ
「最後の話は蛇足でした」と言うと、その話は不要だったという評価になります。単に長かったという感想より、必要性を否定する言い方です。相手が何のために加えたか分からないときは、先に確認してもよいでしょう。
修正を頼むなら、「締切を目立たせたいので、最後の例は別ページへ移しませんか」と目的を示せます。「蛇足だから削って」とだけ言うより、残す情報と移す情報を相談しやすくなります。
自分の文章では、「この段落を読まなくても、読み手が同じ判断をできるか」と考える方法があります。ただ、味わいや具体例まで機械的に削る必要はありません。説明を理解するための例は、結論と同じ内容に見えても役割を持っています。
書き足す前に「蛇足ですが」と断るより、その内容をどこに置くのがよいかを考える。必要なら本文に組み込み、興味のある人向けなら関連情報として分け、役割がなければ削る。付け足しの呼び名より、情報の扱い方を決める方が読みやすくなります。