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LINTO日本語の校正と推敲

間違えやすい日本語 / 第119回

「水を差す」と「水を向ける」は反対?会話で迷う二つの慣用句

話を促したつもりで「水を差してみた」と書くと、会話を邪魔したという意味になってしまいます。「水を差す」は、順調な物事やよい雰囲気を妨げること。「水を向ける」は、相手がある話題に関心を向けるよう誘うことです。 同じ「水」でも、会話での働きは違います。

「水を差す」は盛り上がりや進行を妨げる

「旅行の話で盛り上がっているところに、費用の話を持ち出して水を差した」。楽しい雰囲気に割って入り、勢いをそいだという捉え方です。「仲のよい二人に水を差す」なら、関係を妨げるという意味になります。

ただ、費用を確認すること自体が悪いとは限りません。実行するには必要な話でも、その場の雰囲気を変えた側から「水を差す」と表現することがあります。行為の必要性と、場への影響は分けて考えます。

「水を差すようで恐縮ですが、会場の使用時間を確認したいです」という前置きも使えます。ただ、毎回強くへりくだる必要はありません。「実施前に、使用時間も確認しましょう」と直接提案して構いません。

「水を向ける」は話すきっかけを渡す

「最近読んだ本の話を向けると、相手はうれしそうに語り始めた」。このように、相手の関心が特定の方向へ向くよう働きかけることが「水を向ける」です。

「旅行先について水を向けた」「得意な料理の話へ水を向けると、話が弾んだ」などと使えます。相手が話しやすそうな題材を出す場合も、こちらが聞きたい話へさりげなく近づける場合もあります。

単に質問を一つしたことを、必ず「水を向ける」と表す必要はありません。「出発日はいつですか」と情報を確認しただけなら、「出発日を尋ねた」で十分です。「水を向ける」は、話題へ誘う働きがあることを強調する表現です。

水を向けても話してくれるとは限らない

「その件に水を向けたが、相手は話題を変えた」。こちらが誘ったことと、相手が応じたことは別なので、自然な文です。「水を向ける」は、必ず本音を引き出せるという意味ではありません。

たとえば、相手が最近の出来事を話したそうなら「その後はどうでしたか」と聞けます。答えを避けるようなら、それ以上続けない選択もあります。話題へ誘うことと、話すよう強いることを混ぜない方がよいでしょう。

「水を向けたのに何も話さなかった」と書けば、話してくれる期待が外れたことが伝わります。ただ、本人が話すと約束していなければ、返事をしないことが不誠実だとは限りません。相手の行動を評するときは、その前提も確かめます。

相手の意見を「水を差す」で片づけない

準備の途中で問題点を指摘されたとき、「水を差された」とだけ捉えると、必要な確認まで邪魔に見えてしまいます。話の勢いが止まったとしても、指摘が計画を助ける場合があります。

報告にするなら、「会場の人数制限について指摘があり、いったん日程の相談を止めた」と出来事を書く方法があります。指摘した人が邪魔をしたと決めつけず、話が変わった理由を示せます。

自分が異論を述べる場合にも、「水を差すつもりはありませんが」を付けるだけでは、内容の受け止め方は決まりません。「実施したいと考えています。そのために、先に費用を確認したいです」と目的を共有すると、反対のための反対ではないことが伝わります。

「水を差す」と「水を向ける」を取り違えないことに加え、どちらも話し手から見た行為の説明だと知っておくと役立ちます。雰囲気を妨げたのか、話す方向を示したのか。会話の中で何が起きたかを具体的に考えて選ぶ言葉です。

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