正しい敬語 / 第21回
「ご迷惑をおかけします」と「おかけしました」はどう使い分ける?
明日の工事を知らせるなら「ご迷惑をおかけします」、終わった工事についてお詫びするなら「ご迷惑をおかけしました」。どちらも丁寧な表現で、謝罪の深さに差を付けるための使い分けではありません。
相手の不便が、これから生じるのか、今も続いているのか、すでに解消したのかで選びます。
工事や休業の事前案内には「おかけします」
「明日午前9時から正午まで、入口の補修工事を行います。ご迷惑をおかけしますが、西側の入口をご利用ください」と書けば、これから不便をお願いすることが伝わります。
ただ、謝罪の一文だけでは来館者はどう動けばよいか分かりません。使えない入口と代わりの入口、利用できない時間を先に知らせると、案内として役立ちます。「ご不便をおかけします」も、設備の停止などによる不便に焦点を当てたいときの言い方です。
事前に知らせたからといって、相手が了承したことにはなりません。日程を変更してほしいと頼むメールなら、お詫びに続けて「ご都合はいかがでしょうか」と確認が必要です。
対応が続いているなら「おかけしております」
予約サイトが止まったままの報告で「ご迷惑をおかけしました」と締めると、復旧したように読まれるおそれがあります。現在の状況に合わせて、こう書けます。
現在、予約画面が開けない状況が続いております。ご迷惑をおかけして申し訳ございません。復旧の見込みは、本日15時に改めてお知らせします。
「ご迷惑をおかけしております」としても構いません。大切なのは、謝罪の時制と説明する状況をそろえることです。原因を調査中なら、分かったことと未確認のことも分けて伝えます。
復旧後は「何が戻ったか」を添えて謝る
「ご迷惑をおかけしました」は、済んだ出来事へのお詫びに使えます。障害なら「本日14時に復旧し、現在は通常どおり予約できます。ご迷惑をおかけし、申し訳ございませんでした」と、復旧の事実を添えると明確です。
システムが直っていても、申し込めなかった人への個別対応は残ることがあります。その場合は「予約機能は復旧しました。未完了のお申し込みについては、順にご連絡しております」と書けば、終わった部分と続いている部分が分かります。
「おかけしました」を避け続ける必要はありません。お詫びを過去形にするかどうかより、相手の用件がどこまで解決したかを正確に知らせることが先です。
謝罪に添える「申し訳ございません」という形は、国立国語研究所の解説でも取り上げられています。