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LINTO日本語の校正と推敲

間違えやすい日本語 / 第129回

「鼻につく」はにおいだけ?褒めたつもりが嫌味に変わる言葉

「あの人の話し方は鼻につく」。この文はにおいの話ではなく、話し方をうっとうしく感じるという評価です。「鼻につく」は、においが鼻に残る意味から、飽きて嫌になることや、人の振る舞いが不快に感じられることにも使われます。 印象が強いというだけの中立的な表現ではありません。

「鼻につく話し方」は褒め言葉ではない

「専門用語を繰り返す話し方が鼻についた」。単に専門用語が多かっただけでなく、それがわずらわしく感じられたという文です。「自慢話が鼻につく」「わざとらしい身振りが鼻につく」といった使い方もあります。

特徴的で覚えやすい話し方を褒めたいなら、「印象に残る」「言葉の選び方に個性がある」と言えます。「鼻につくほど個性的」と書くと、個性の強さを肯定するつもりでも、不快感を含む評価になります。

ただし、「鼻につく」は話し手の受け止めを表す言葉です。同じ話し方を好ましく感じる人もいるため、相手の客観的な欠点と同一視しない方が正確です。「自分には押し付けがましく感じられた」と、感じた側を明らかにする書き方もできます。

においに使うときも強さへの抵抗を含みやすい

「香料のにおいが鼻について、食べづらかった」。においが鼻に残り、気になる様子を述べています。「鼻につく香り」とだけ書けば、一般に好ましい香りの紹介にはなりにくい表現です。

よい香りを伝えるなら、「香りが立つ」「ほのかに香る」「香りが鼻に抜ける」など、実際に感じた特徴へ合わせて書けます。強く感じたからといって、必ず不快だったわけではないなら、「香りをはっきり感じた」と表す方法もあります。

「鼻をつく」は、刺激の強いにおいが鼻を刺激する場合に使われます。「鼻につく」と似ていますが、同じ一字違いだから自由に入れ替えられるわけではありません。行動への不快感なら「自慢話が鼻につく」が一般的な形です。

「鼻にかける」は自慢する行動

「成績がよいことを鼻にかける」は、そのよさを得意がったり自慢したりすることです。「鼻につく」は、それを見聞きした側が不快に感じることなので、立場が違います。

「受賞を鼻にかける話し方が、周囲には鼻についた」と続ければ、自慢する行為と、受け止めた側の感情が分かれます。ただし、本人が自慢する意図だったか分からないなら、発言内容を示す方が慎重です。

「三回の受賞について何度も話した」と事実を書き、「聞いているうちに自慢のように感じた」と感想を分けられます。相手の意図と自分の印象を一度に断定しないためです。

不満を伝えるならどこを変えてほしいかを書く

「その話し方は鼻につきます」と本人に言っても、どこを変えればよいか分かりにくくなります。相手の話し方全体を否定する強い一言にもなります。

専門用語が理解を妨げているなら、「初めて聞く言葉が多いので、意味を添えて説明してもらえますか」と頼めます。自分の話を聞いてもらえないなら、「こちらの説明を最後まで聞いてから返事をもらえると助かります」と具体的に伝えられます。

作品の感想なら、嫌だった箇所を挙げることができます。「結論のたびに読者を褒める文が入り、説明の内容に集中しにくかった」と書けば、単に「鼻につく文章だった」より評価の理由が分かります。

においについても人物についても、「鼻につく」は不快さを含む語です。目立つことや印象の強さだけを言いたいのか、それに嫌な感じを持ったのか。その違いを意識すると、称賛のつもりで批判を書いてしまうことを防げます。

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