正しい敬語 / 第129回
「どうされますか」と「いかがなさいますか」は何が違う?選んでもらう敬語
「どうされますか」と「いかがなさいますか」は、どちらも相手の意向や選択を尋ねる敬語です。「いかがなさいますか」のほうが、改まった接客などになじみます。ただ、言葉を丁寧に変えるだけでは、何を選んでほしいのかまでは伝わりません。
品物や日程を選んでもらうときは、質問の対象と選択肢を示すと、相手が答えやすくなります。
どちらも相手の「する」を敬っている
「される」は「する」に尊敬の「れる」を付けた形で、「なさる」も「する」の尊敬語です。「いかが」は「どう」を改まって述べるときに使います。そのため、「どうされますか」も、敬語になっていないわけではありません。
お飲み物は、いかがなさいますか。
注文を尋ねる場面に合う表現です。メニューを見ている相手なら、何を選ぶ質問かが分かります。種類をまだ知らない相手には、「温かいお茶と冷たいお茶をご用意しています。どちらになさいますか」と案内してもよいでしょう。
「いかがなされますか」のように、なさるへさらに尊敬の形を足す必要はありません。迷ったら「いかがなさいますか」と、短い形で尋ねられます。
二つから選ぶなら「どちら」にする
お席は、窓側と通路側のどちらになさいますか。
選択肢が二つだと分かっているなら、「どう」より「どちら」のほうが答える対象が明確です。相手にとって何が違うかも必要に応じて添えます。
窓側は日差しが入り、通路側は出入りしやすいお席です。ご希望はございますか。
選択を助ける情報を説明したうえで、希望を聞いている例です。空いている席が一つしかないなら、「どちらになさいますか」と選べるように言うより、「現在は通路側のお席をご案内できますが、よろしいでしょうか」と現状を伝えます。
選べる場合は選択肢を、選べない場合は案内できる内容を示します。 敬語として整っていても、実際にはできない選択を示すと、相手は判断し直すことになります。
すぐに決めなくてもよいとき
ご希望はいかがでしょうか。お決まりでなければ、後ほど改めて伺います。
検討中の相手に尋ねるときの例です。「いかがなさいますか」を何度も繰り返すと、答えを急かしているように聞こえることがあります。待てるなら、待てることを言葉にできます。
返事の期限がある場合は、「準備の都合で、金曜までにご希望をお知らせいただけますと幸いです」と具体的に伝えます。「ごゆっくりお考えください」と言った直後に即答を求めると、どちらを受け取ればよいか相手が迷います。
別の人にも相談して決めることなら、「ご相談のうえ、お決まりになりましたらお知らせください」と返せます。相手がその場で決められるかどうかまで含めて、質問のタイミングを選びます。
体調や困り事を尋ねる「どうされましたか」
「どうされましたか」は、選択ではなく、起こったことや困っていることを尋ねる場合にも使います。受付に困った様子で来た相手には、「どうされましたか。お困りのことがあれば伺います」と声を掛けられます。
この場合、「いかがなさいますか」に置き換えると、これから何をするかという意向を尋ねる意味へ変わりかねません。敬語の丁寧さだけで、二つを機械的に交換しないようにします。
体調を気遣うなら、「その後、お加減はいかがですか」と尋ねる方法もあります。何かを決めてもらう質問か、状態を聞く質問かで、後ろに続く言葉が変わります。
相手が答えた後は、「では、窓側のお席へご案内します」のように、選ばれた内容を短く確認すると自然です。尋ね方を整えるだけでなく、返事を受けた行動まで伝えれば、やり取りが途切れません。