正しい敬語 / 第74回
「なさる」と「される」はどちらが丁寧?相手の行動を尋ねる敬語
相手の行動を丁寧に尋ねるとき、「なさる」も「される」も使えます。「出席なさいますか」「出席されますか」は、どちらも相手を立てた言い方です。片方だけが正しいわけではありません。
違いが気になるのは、「される」が受け身にも使われるためです。誰が何をするのか紛れそうなら、「なさる」や具体的な動詞に替えると、敬意を保ちながら内容を伝えやすくなります。
「なさる」は相手がすることに使う
「する」を相手への敬語にした言葉が「なさる」です。予定や希望を尋ねる場面で使えます。
来月の説明会には、ご出席なさいますか。
お飲み物は、何になさいますか。
一つ目は参加の予定、二つ目は相手が選ぶ内容を尋ねています。「何をするんですか」をいつも「何をなさるんですか」に替えればよいわけではなく、何について尋ねているかを示すことも必要です。
自分の行為には「なさる」を使いません。「私が説明なさいます」ではなく、「私が説明いたします」「私からご説明します」と言えます。また、自分の会社の担当者について客に話すときも、「担当者が確認いたします」と自分側の行為として伝えます。
「される」で自然に尋ねられる場合
「来週は出張されますか」「普段はこちらを利用されていますか」も、普通に使える尊敬の表現です。会話全体が「です・ます」で進んでいるなら、毎回「なさる」に統一する必要はありません。
この企画では、どの部分を担当されていますか。
相手の担当範囲を尋ねる文です。「担当なさっていますか」でも伝えられますが、こちらの方が必ず丁寧で好印象、と順位を付けることはできません。
また、「何をされている方ですか」は、現在の作業ではなく、普段の職業や活動を尋ねる質問にもなります。今していることだけを知りたいなら、「こちらでは、どの作業を担当されていますか」と範囲を絞れます。丁寧な動詞を選ぶことと、私生活に踏み込みすぎないことは別に考えられます。
「ご利用される」のように、敬語の形をつなぎ合わせると不自然になる組合せもあります。「利用される」か「ご利用になる」なら形が整います。「ご出席なさる」と同じように見えるからといって、あらゆる語を同じ組合せにできるわけではありません。
受け身と紛れるときは動作を言い直す
「部長は説明されました」と聞くと、部長が説明をしたのか、誰かから説明を受けたのか、前後によって読み方が揺れます。
| 伝えたいこと | 言い方の例 |
|---|---|
| 部長が説明した | 部長が皆さんに説明なさいました |
| 部長が説明を受けた | 部長は担当者から説明を受けました |
| 部長が自分に説明してくれた | 部長から説明していただきました |
誰を立てるかだけでなく、行為の向きも違います。「されました」を別の尊敬語に替える前に、起きたことを確認したい場面です。
「先生は紹介されました」も同様です。先生が誰かを紹介したなら「先生が新しい講師を紹介なさいました」、先生が紹介を受けたなら「司会者が先生をご紹介しました」と、主語を変える方法もあります。
「なさってください」と頼むときの強さ
「こちらでお手続きをなさってください」は丁寧な案内ですが、相手が手続きを行うことを前提にしています。相談の段階なら「こちらでお手続きいただけますが、いかがでしょうか」と選択肢を示せます。
逆に、受付を終えるために必要な行為なら「こちらにお名前をご記入ください」と具体的に頼む方が分かりやすくなります。何でも「なさる」を使うより、書く、選ぶ、確認するなど、実際にしてほしい動作に合う言葉を選べます。