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LINTO日本語の校正と推敲

正しい敬語 / 第75回

「存じております」と「存じ上げております」は何が違う?人と情報の伝え方

「存じております」は、知っていることを丁重に伝える言い方です。「存じ上げております」は、知っている対象となる人を立てる場面で使います。「お名前は存じ上げております」「その制度については存じております」と選ぶと、関係が分かりやすくなります。

「存じ上げる」の方が長いから、どんな内容にも丁寧になるというわけではありません。誰のことを、どの程度知っているのかまで伝えると、実際の返答に使いやすくなります。

人を知っているときの「存じ上げる」

山田先生のお名前は存じ上げておりますが、直接お目にかかったことはありません。

名前だけ知っている場合の返事です。「存じ上げています」だけだと、面識もあるように受け取られる可能性があります。紹介の場では、知っている範囲を続けると誤解を防げます。

直接会ったことがあるなら、「昨年の講演会でご挨拶しました」「以前、ご指導いただいたことがあります」と具体的に伝えられます。敬語を長くするより、どんな接点があったかを示す方が会話は進みます。

相手本人に向かって「あなたを存じ上げております」と言うと、知っていることだけが強く響く場合があります。「以前、展示会でお話を伺いました」と接点から伝える方が、初対面かどうか分からず戸惑っている相手の助けになります。

仕組みや出来事なら「存じております」

制度、日程、変更内容などの情報については、「存じております」が使えます。

受付時間が変更になることは存じております。開始日は来月1日で間違いないでしょうか。

「知っている」と「内容が確定したと理解している」は別なので、確認したい点を続けた例です。「存じております」と答えるだけでは、こちらがどこまで把握しているかは相手に伝わりません。

「知っております」も、丁寧な返事として使えます。親しい取引先との短い会話まで全て「存じております」に替える必要はありません。一方、「承知しております」は、連絡を受けて理解していることを伝えたいときに使いやすい表現です。

人物との関わりには「存じ上げる」、情報の把握には「存じている」を基本に、知っている範囲も伝えます。

「存じます」には思うという意味もある

「存じます」は、知識を示すときだけでなく、自分の考えを丁重に述べる場合にも使います。

この案であれば、予定どおり進められると存じます。

これは「そう思います」という判断です。「進められることを知っています」という意味とは限りません。読み手に確定事項として伝えたいなら、「担当者に確認したところ、この案で進められるとのことでした」と、確認結果を書いた方が正確です。

反対に、まだ予測でしかないことを「確実と存じます」と飾っても、確度は上がりません。敬語の形に事実の確かさを任せず、「現時点では」「見込みです」など、判断に必要な情報を添えられます。

知らないときは無理に取り繕わない

質問に答えられない場合は、「申し訳ありませんが、存じ上げません」「その点は存じません」と伝えられます。ただ、人物の存在を知らないのか、担当する情報を持っていないのかで、続く対応は異なります。

その件は、私の方では把握しておりません。担当者に確認し、本日中にお返事します。

これは確認して返答できる場合の文です。分からないことを謝るだけで終えず、答えられる見込みを示しています。確認先も分からないなら「確認できる窓口を調べます」と、実際にできることだけを伝えます。「存じません」を「存じ上げません」に替えることより、その後に何ができるかが大事な返事です。

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