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LINTO日本語の校正と推敲

正しい敬語 / 第76回

「申します」と「申し上げます」は入れ替えられる?名乗りと挨拶の敬語

「申します」と「申し上げます」は、どちらも自分側が言うことを丁寧に述べる表現です。ただし、働きは同じではありません。名乗るときの「佐藤と申します」、相手へのお礼の「御礼申し上げます」が、それぞれ使いやすい代表例です。

「申し上げます」の方が長いので常に上等、とは考えなくて大丈夫です。相手に何かを述べる場面なのか、自分の名前や言った内容を説明する場面なのかで選びます。

自己紹介は「申します」で十分に丁寧

初めまして。青葉会館で予約を担当しております、佐藤と申します。

相手が初めて会う取引先でも、改まった式典の参加者でも使える名乗りです。「佐藤と申し上げます」とする必要はありません。氏名を伝えるだけなら「佐藤です」でも丁寧ですが、「申します」にすると初対面の挨拶に合う改まり方になります。

「こちら、担当の佐藤と申します」と、第三者を紹介するときにも使えます。ただ、自分が佐藤なのか同席者が佐藤なのか分かりにくい場所では、「担当の佐藤をご紹介します」と言った方が人物を取り違えません。

自己紹介で名前を聞き取ってもらえなかったら、「佐藤です。砂糖と同じ読みで、佐藤と書きます」のように説明を補えます。同じ長い名乗りを繰り返すより、相手が確認したい部分を伝えられます。

相手に伝えるお礼やおわびは「申し上げる」

展示会の開催に当たり、多くのご協力をいただきました。心より御礼申し上げます。

ご案内に誤りがありましたことを、おわび申し上げます。

「申し上げる」は、その言葉を向ける相手を立てる表現です。感謝や謝罪を改まって伝える文に合います。「ありがとうございます」「申し訳ありません」でも伝えられるので、日常の短い連絡で必ず置き換える必要はありません。

おわびの文では、「おわび申し上げます」の前に何が起きたかを示すことが重要です。「このたびは」とだけ始めるより、案内の誤り、到着の遅れなど、相手が受けた影響を明らかにします。

名乗りを丁重にする「申す」と、言葉を向ける相手を立てる「申し上げる」は、役割が異なります。

自分側の伝言を社外へ伝えるとき

担当の佐藤が、午後にお電話すると申しておりました。

社外の相手に、自社の担当者が言ったことを伝える例です。自分の上司でも、ここで「部長がおっしゃっていました」と持ち上げるのではなく、自分側の人として伝えます。

一方、取引先の人から受けた言葉なら、「山田様が、午後にお電話くださるとおっしゃっていました」と言えます。発言した人物が誰かで、使う敬語が変わります。

「先生が御礼申し上げています」と言いたくなる場合もありますが、先生の発言をその先生の立場で紹介するのか、自分が先生を立てて話すのかが紛れます。「先生から、お礼をお伝えするようにとのことでした」と伝言として示せば、主語の混乱を避けられます。

「申し上げたとおり」が強く聞こえる場面

「先ほど申し上げたとおりです」は、既に伝えた内容を示す丁寧な文です。それでも、聞き返した相手にこれだけで答えると、「もう説明したはず」と責めているように届くことがあります。

先ほどの説明が分かりにくく、失礼しました。申込みは今月末までで、お支払いは来月10日までです。

説明の不足がある場合は、このように内容を分けて言い直せます。相手の聞き落としかどうかを追及するより、確認したい情報をもう一度示す返しです。敬語が正しいことと、相手の疑問に答えていることは、分けて確かめたいところです。

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