正しい敬語 / 第126回
「ご紹介にあずかりました」は正しい?登壇や紹介の後の挨拶
「ご紹介にあずかりました」は、「ただ今、紹介していただきました」という意味の丁寧な表現です。司会者などに紹介されてから、自分が挨拶を始める場面で使います。会議や式典になじむ一方、少人数の会話では「ご紹介いただきました」と言うほうが自然なこともあります。
「あずかる」は、この場合、好意などを受けるという意味です。物を一時的に保管する「預かる」とは意味が違います。
紹介された直後の名乗りに使う
ただ今ご紹介にあずかりました、青葉研究所の山田です。本日は、地域の古い地図についてお話しします。
司会者が名前や所属を述べた後に、登壇者が話し始める挨拶です。自分の名前をもう一度伝えてから、今日話す内容へ進んでいます。紹介を受けた事実への挨拶なので、実際に誰かが紹介した後に使います。
自分で会の最初から話し始めるなら、「皆様、こんにちは。青葉研究所の山田と申します」で自然です。紹介がなかったのに、定型句だからと「ご紹介にあずかりました」を置く必要はありません。
司会者の説明に補足したい点があっても、長い経歴をすべて繰り返すと挨拶が伸びてしまいます。「本日は、特に調査を続けてきた旧市街についてお話しします」と、本題に必要な情報を足せば十分です。
漢字は「与る」だが、平仮名でもよい
「あずかる」には、招待や厚意、恩恵などを受ける意味があります。この意味を漢字で書けば「与る」です。「預る」「預かる」と書くと、荷物や人を引き受けて保管・世話する別の意味になります。
このたびはご招待にあずかり、ありがとうございます。
こちらも、招待してもらったことへのお礼です。「紹介」と「招待」は別のことなので、招かれただけで、まだ人前で紹介されていないときにも「ご紹介にあずかり」とするのは合いません。
紹介を受けたなら「ご紹介」、招待を受けたなら「ご招待」と、実際にしてもらったことに合わせます。 難しい漢字を使う必要はなく、「ご紹介にあずかりました」と平仮名で書けば読みやすくなります。
この言い方になじみがなければ、「ご紹介いただきました」と言い換えても失礼ではありません。式典でも、自分が無理なく話せる言葉で挨拶できます。
少人数で引き合わせてもらったとき
佐藤さんにご紹介いただきました、山田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
初対面の相手と直接話す場面の例です。紹介者の名前を添えると、どのつながりの相手かも伝わります。「ご紹介にあずかりました」が使えないわけではありませんが、話し言葉としてやや改まった響きになります。
紹介者がその場にいて「こちらが山田さんです」と言ってくれた直後なら、「山田です。初めまして」で十分な場合もあります。目上の相手だからと、毎回長い前置きを用意する必要はありません。
紹介後にメールを送るなら、「本日、佐藤様にご紹介いただきました山田です」と、会った場面を一緒に書けます。相手が多くの人と会う会合では、氏名だけより思い出してもらいやすくなります。
紹介してくれた人へのお礼は別に伝える
本日は鈴木様をご紹介くださり、ありがとうございました。お話を伺い、資料の探し方が分かりました。
これは、紹介をしてくれた人に送るお礼です。人前で「ご紹介にあずかりました」と名乗ったことだけで、紹介者への個別のお礼が伝わるとは限りません。何が助かったかを短く添えると、つないでくれたことへの感謝が明確になります。
相手を紹介する側なら、「ご紹介にあずかりました」ではなく、「続いて、講師の山田様をご紹介いたします」と述べます。紹介する人と、紹介される人で使う言葉が違います。
紹介の際に大きく褒めてもらった場合も、その内容を全部否定する必要はありません。「丁寧にご紹介いただき、ありがとうございます」と受け止めて、自分の話へ進むことができます。