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LINTO日本語の校正と推敲

読めそうで読めない漢字 / 第102回

「委嘱」は何と読む?「委託」との違いは頼む相手にある?

市から届いた案内に「委員を委嘱します」と書かれていたら、どう読むでしょうか。「委嘱」は「いしょく」。特定の仕事や役割を人に頼んで任せることです。

似た言葉の「委託」と意味が重なる一方、委員や講師などの役割については「委嘱」がよく使われます。「人なら委嘱、会社なら委託」という区分だけで覚えると、かえって使い方を狭めてしまいます。

「委嘱」の二字には、任せる・頼むという意味がある

「委」は委ねること。「嘱」にも、頼む、任せるという意味があります。二字を合わせた「委嘱」は、特定の役目を依頼して任せる言葉です。「委嘱状」は、その役目を依頼することを示した文書を指します。

「地域の行事について助言する委員を委嘱する」「審査員を委嘱する」といった形で使えます。行政では、審議会などの委員に外部の人を任じる際の用語としても使われます。

「委嘱を受けた」と聞けば、何らかの役割を正式に頼まれたのだと分かります。ただし、どんな役割を、どのくらいの期間担うのかは、この語だけでは分かりません。「一年間、審査員を委嘱された」と内容を添えると、状況がはっきりします。

「委嘱」と「委託」は、意味が完全に分かれるわけではない

「委託」も、仕事などを他者に頼んで任せることです。辞書でも両語は近い意味として扱われています。一般的な文章では、「委嘱」は役職や専門的な役目に、「委託」は業務や作業を任せる場面に使うと、内容が伝わりやすくなります。

表現の例文が伝える中心
展覧会の審査員を委嘱する審査する役割を担ってもらう
記念作品の作曲を委嘱する専門家に制作を依頼する
会場の清掃を委託する清掃の業務を任せる
資料の翻訳を委託する翻訳の作業を任せる

委託の相手が個人であることもあります。「人か会社か」だけではなく、何を任せたのかに目を向けると選びやすくなります。文書で定められた役職名や手続名がある場合には、その表記を確かめます。

「委嘱された」と「就任した」では視点が違う

「審査員を委嘱された」は、頼む側から役割を任されたことを表します。「審査員に就任した」は、その役割に就いたという本人側の状態を伝える言い方です。

紹介文なら、「市から文化振興委員を委嘱された」と書けば依頼元が分かります。「今年から文化振興委員を務めている」なら、現在の活動が伝わります。どちらが丁寧かという違いではありません。

  • 依頼を伝える:「来年度の選考委員を委嘱いたします」
  • 引き受けたことを伝える:「選考委員の委嘱をお受けしました」
  • 活動を紹介する:「来年度は選考委員を務めます」

「委嘱する」自体は敬語ではありません。「いたします」や「お受けしました」など、文全体の形によって相手との関係を表します。

「委嘱」の一語から雇用条件までは分からない

「委嘱されたのだから、職員になったということだろう」とまでは読み取れません。役目の名前や依頼の表現と、身分や報酬、担当範囲は別々に確認する情報です。

案内を作るなら、「委嘱のお願い」だけでなく、「年三回の審査会に出席し、応募作品を選考していただく予定です」のように、してほしいことを示すと親切です。受ける側も、自分が担当する範囲を理解できます。

改まった場面に合う語ですが、親しい人へ一日だけの手伝いを頼むなら「委嘱します」より「受付をお願いできますか」が自然でしょう。役割の正式さと、伝える相手に合わせて選べる言葉です。

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