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LINTO日本語の校正と推敲

読めそうで読めない漢字 / 第106回

「施策」は「しさく」?「せさく」?読み方と「政策」との違い

「新しい施策を打ち出す」。文字で読めば分かるのに、声に出すと「しさく」か「せさく」か迷う言葉です。

『デジタル大辞泉』や『精選版 日本国語大辞典』が見出しにしている読みは「しさく」です。一方、「せさく」という発音も実際に使われています。辞書の基本の読みと、現場で耳にする読みを分けて確認すると、過度な決めつけを避けられます。

辞書の読みは「しさく」。実際には「せさく」も

「施」は「施す(ほどこす)」の字です。「施策」は、政策や対策を立てて実行することや、実際に取る手立てを表します。「しさくを進める」「しさくの成果を調べる」と読めます。

「せさく」という読みも、単なる聞き違いではありません。文化庁の「国語に関する世論調査」では、ふだんの発音として「しさく」と「せさく」の両方が調査されています。行政の資料にも「せさく」のふりがなが使われた例があります。

ただし、使う人がいることと、すべての辞書が同じ扱いで載せていることは別です。読みを一つ確認して覚えるなら「しさく」を押さえ、特定の資料や組織内の呼称を読む場合は、その表記やふりがなも確かめるとよいでしょう。

「政策」は方針、「施策」は実現する手立てに注目する

「政策」は、政治や行政などの方針や方策を表します。「施策」は、その目的に向けて具体的に何をするかを述べる場面で使いやすい語です。ただし、二つの意味が完全に切り離されているわけではありません。

例えば、「地域の文化活動を支える」という方向を掲げたとします。そのために「練習場所を提供する」「小規模な発表会を支援する」といった手立てを考える。この関係を、政策の方向と、それを進める施策として整理できます。

  • 「政策の方向を示す」:何を目指し、どんな方針を採るか。
  • 「施策を具体化する」:目指すことのために何を実行するか。
  • 「施策の効果を検証する」:取った手立てがどう働いたか。

行政の計画などでは、それぞれの語を定義して階層を整理している場合もあります。個別の文書を読むときは、一般的な語義だけでなく、その文書内での使い方を見る必要があります。

「試作」「思索」とは、文の中身で区別する

「しさく」には、試しに作る「試作」、物事を深く考える「思索」もあります。「新しいしさくを考える」という音だけなら、試作品の話か、実行する手立ての話かが分かりにくい場合があります。

表記意味が伝わる例文
施策来館者を増やす施策として、開館時間を延ばす
試作新しい材料で試作し、強度を確かめる
思索静かな部屋で、作品の主題について思索を巡らす

会話では「来館者を増やす取り組み」「試しに作ったもの」と言い換える方法もあります。同音の語があるからといって、いつも読みを変えなければならないわけではありません。具体的な目的や対象を添えるだけでも、聞き取りやすくなります。

「施策を講じる」だけでは、何をするかは伝わらない

「必要な施策を講じます」は、何らかの手立てを取るという改まった表現です。ただ、読み手が知りたいのは、その中身であることが多いでしょう。

「混雑を減らす施策を実施します」に続けて、「受付窓口を一つ増やし、入場時間を分散します」と書けば、予定していることが見えてきます。「施策」は、具体的な内容をまとめて呼ぶときには便利ですが、説明そのものの代わりにはなりません。

読み方に迷ったら「しさく」、意味に迷ったら「どんな目的のために、何をするのか」。この二つを確かめると、案内や記事の中でも落ち着いて扱える言葉になります。

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