読めそうで読めない漢字 / 第108回
「符丁」は「ふちょう」。仲間内の合図と値札に共通する意味
「二人は符丁を使って話しているようだった」。初めて見ると「ふてい」と読みたくなりますが、「符丁」は「ふちょう」です。仲間内だけに通じる言葉や合図、何かを示す記号などを表します。
秘密の暗号だけを思い浮かべると、意味の一部しかつかめません。商品の値段を示すしるしも「符丁」と呼ばれます。共通しているのは、しるしと意味の対応を知る人に内容が伝わることです。
「符丁」「符牒」「符帳」は同じ語の表記
「符丁」は「符牒」「符帳」とも書きます。難しい字の「牒」を使った文章でも、読みは「ふちょう」です。漢字ペディアは「符丁」を「符牒」の書き換えとして扱っています。
「符」は、しるしや符号に関わる字です。「符号」という語を手がかりにすると、「符丁」も何かを示すしるしだと理解しやすくなります。「丁」があるから人数や冊数を数える言葉、と考える必要はありません。
辞書が挙げる意味には、商品の値段や等級を示すしるし、仲間だけで通じる言葉、一般的なしるし・記号があります。「仲間だけが分かる」という意味と、「何かを示す記号」という意味は重なりますが、すべての用例が秘密を前提にしているわけではありません。
値段を表すしるしも「符丁」になる
たとえば、店の中で「青い丸は五百円、赤い丸は千円」と決めたとします。このように値段と記号を対応させると、決まりを知っている人は、数字を書かなくても価格を読み取れます。これは意味をつかむための仮の例です。
商取引の歴史では、値段を仲間内の言葉で表す符丁が使われてきました。「符丁」は単に難しい専門用語というだけでなく、決まった意味を短いしるしに託すものとして考えると分かりやすくなります。
一方、青い丸を見ただけで誰でも五百円と分かるわけではありません。しるしそのものに価格が備わっているのではなく、あらかじめ決めた対応関係があるから伝わるのです。
「隠語」「暗号」「合図」とはどこが重なる?
「符丁」は、言葉にも記号にも使えます。「隠語」は、特定の仲間に通じる言い方に注目する語です。「暗号」は、内容をそのままでは読めない形に変えて伝える仕組みに目を向けます。「合図」は、何かを知らせるためのしるしです。
例えば、舞台袖で手を上げて開始を知らせれば「合図」です。控室の扉に特定の印を付け、関係者だけが準備状況を読み取るようにすれば、「符丁」と表現できる場面があります。
- 「仲間内の符丁が飛び交う」:外からは分かりにくい言葉が交わされる。
- 「資料に符丁を付けて見分ける」:記号などで区別する。
- 「合図を待って幕を開ける」:知らせを受けて行動する。
これらは境界の厳密な分類表ではありません。一つのしるしが、符丁であり、合図でもあることがあります。何を強調して説明するかで語を選べます。
「符丁のような言葉」は、分かりにくさの批評にも
「説明が符丁だらけで分からない」と言われたら、相手には通じない略語や内輪の言葉が多い、という指摘かもしれません。実際に秘密を守る目的がなくても、外の人を置き去りにする言葉遣いを、比喩的に「符丁」と呼ぶことがあります。
案内に「次はB処理です」とだけ書いても、B処理の内容を知らない人は動けません。「次に受付番号を確認します」と具体的に書けば、内輪の対応表を知らなくても分かります。
「符丁」は、知っている人には便利なしるしが、知らない人には何も伝えないことを思い出させる語でもあります。読み方と一緒に、誰と意味を共有している言葉なのかを考えてみると、用例が身近になります。