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LINTO日本語の校正と推敲

読めそうで読めない漢字 / 第42回

「踏襲」は「ふしゅう」ではない?前例を受け継ぐ言葉を読む

「踏襲」は「とうしゅう」と読みます。「踏む」の「ふ」につられて「ふしゅう」とは読みません。以前から行われている方法や方針を受け継ぎ、それに従うことです。「例年の形式を踏襲する」なら、今年も従来の形式を基本として行うという意味になります。

「踏」と「襲」はどちらも受け継ぐ意味につながる

「踏」は足で踏む字ですが、前の人が通った道をたどるように、ある方針に従う意味でも使われます。「襲」も「襲う」だけの字ではありません。「襲名」「世襲」のように、前からのものを受け継ぐ意味があります。「踏襲」の二文字を、踏みつけて襲うという動作として読まないことがポイントです。

表記には「蹈襲」もありますが、現在の文章では「踏襲」が一般的です。古い文章に別の字が出てきても、ここでは同じ言葉として読めます。字の形を覚えるだけでなく、「受け継ぐ対象は何か」を見ると意味を取り違えにくくなります。

「前例を踏襲する」はよいこと?悪いこと?

「踏襲」は以前のやり方に従うことを表し、その選択がよいか悪いかまでは決めません。 「利用者が迷わないよう、案内板の色分けを踏襲した」なら、慣れた仕組みを残したという肯定的な説明になります。

反対に、「事情が変わったのに、昨年の対応をそのまま踏襲した」なら、見直すべき点を見直さなかったという批判が伝わります。否定的な意味は「事情が変わったのに」「そのまま」といった周囲の言葉から生まれています。「踏襲」と書かれているだけで、古いやり方への非難だと読む必要はありません。

「前任者の方針を踏襲しつつ、開館時間は見直す」という文も成立します。方針の核を引き継ぎながら、個別の運用を変えることはあるからです。何もかも完全に同じでなければ踏襲と言えない、ということではありません。

「継承」「模倣」とは対象が少し違う

「継承」は、地位、権利、技術、精神などを受け継ぐときに広く使います。「職人の技を継承する」は自然ですが、「職人の技を踏襲する」では、その人の手順や様式に従うという意味が前に出ます。受け継いだ後に発展させるかどうかだけで、二語を区別することはできません。

「模倣」は、ほかのものをまねることです。必ずしも前任者や前年との継続関係はなく、別の店の見せ方をまねる場合にも使えます。「昨年度の展示方法を踏襲した」と「隣の店の展示方法を模倣した」では、どこから方法を採ったのかが違います。

表現特に伝わる内容
昨年の選考方法を踏襲する以前の方法に従う
先代の理念を継承する考え方を次の担い手が受け継ぐ
有名店の内装を模倣するほかの例をまねる

これらは使える範囲が重なる語です。表のような傾向を参考にしつつ、同じ内容を違う視点から説明できることも覚えておくと便利です。

引き継ぐ範囲まで書くと誤解を防げる

「例年どおり踏襲します」だけでは、日程、参加条件、料金のどこまで同じなのか分かりません。「参加条件は昨年の規定を踏襲し、申込方法だけを変更します」とすると、相手が確認すべき箇所が絞れます。

また、新しい会場で開く催しについて「会場も昨年を踏襲する」と書くと、場所が同じなのか、座席配置を同じにするのか迷わせます。「座席の配置は昨年の会場を参考にします」など、具体的に書くほうが伝わる場合もあります。「とうしゅう」と正しく読めたら、その後は何を残し、何を変えるのかに注目して読むと、方針の説明がぐっと明確になります。

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