読めそうで読めない漢字 / 第40回
「分別」は「ぶんべつ」?「ふんべつ」?読み方で意味が変わる
「分別のある人が、ごみを分別する」。同じ二文字でも、前と後で読み方が違います。前は「ふんべつ」、後は「ぶんべつ」です。
物を種類ごとに分けるなら「ぶんべつ」、道理をわきまえて判断するなら「ふんべつ」と読みます。
「分別がある」は分類が得意という意味?
「ふんべつがある」は、良し悪しや物事の道理を考えて判断できるという意味です。分類作業が上手なことを褒めているのではありません。
腹が立っても、その場で言い返さない分別はあった。
この文は、自分の反応がもたらす結果を考え、行動を選んだことを表します。年齢だけで決まるものでもなく、「年相応の分別」と言えば、年齢に応じた判断を期待する含みが加わります。
「無分別」は「むふんべつ」。十分に考えず行動する様子を言います。これを、ごみが未分類であることの表示として「無分別」と使うと、文脈によっては別の意味に取られます。
「ぶんべつ」は種類を見分けて分ける
「資源ごみを分別する」なら、種類に応じて分けることです。こちらは具体的な分類の行為を指します。
| 表現 | 読み | 意味 |
|---|---|---|
| 分別のある対応 | ふんべつ | 道理に沿った判断 |
| 分別を失う | ふんべつ | 冷静に判断できなくなる |
| 素材ごとに分別する | ぶんべつ | 種類を分ける |
辞書を開くと、「ふんべつ」には仏教での意味も載っています。一般の会話でまず区別したいのは、人の判断力と、物を分ける行為です。
どちらも物事を見分けることに関わるため、字が同じなのは不自然ではありません。ただ、「読みが違っても意味は同じ」としてよい語でもありません。誰の何を述べているかを見れば、最初の例文も読み分けられます。
「分別を失う」「無分別」は判断の話
「分別を失い、言わなくてもよいことまで口にした」の「分別」は、「ふんべつ」と読みます。物を分ける作業を忘れたのではなく、道理を踏まえて判断する落ち着きを失った、という意味です。
「無分別な振る舞い」の読みも「むふんべつ」。後先を考えない行動などを批判する表現で、「まだ分類していない物」のことではありません。分類していない資料なら「未分類の資料」と書きます。
| 文中の形 | 読み | 意味の中心 |
|---|---|---|
| ごみを分別する | ぶんべつ | 種類によって分ける |
| 分別のある判断 | ふんべつ | 道理をわきまえた判断 |
| 分別を失う | ふんべつ | 適切に判断する落ち着きを失う |
「分別」の二文字だけを見て読むより、前後の語を含めて確かめるのが近道です。特に「分別がある」「分別をわきまえる」のように人の判断力を述べる文では、「ふんべつ」が自然につながります。
相手に「分別」を求めるときの言い方
「もう大人なのだから、分別を持ちなさい」は、相手の判断力をたしなめる言葉です。丁寧な語尾に変えても、評価する側と評価される側という関係は残ります。
騒いでいる人に静かにしてほしいなら、「分別のある行動をお願いします」より「この場所では声を落としてお話しください」のほうが、求めている行動がはっきりします。「ふんべつ」は行動を振り返る説明には使えても、具体的なお願いの代わりになるとは限りません。
一方、「ぶんべつ」を求める案内では、分け方を添えると親切です。「回収箱の表示に従って、缶と瓶を分別してください」のように書けば、何をすればよいかが分かります。二つの読みは、相手の人格について述べるのか、物の扱い方を示すのかという点でも大きく異なります。