「閑話休題」の意味と使い方|余談に入る言葉ではなく「本題に戻る」言葉
声に出して使う人は、ほとんどいないはずです。打ち合わせの途中で「閑話休題」と言われたら、少し驚くでしょう。読みは「かんわきゅうだい」。この四字熟語はもともと書き言葉のもので、長い文章の途中、話の流れが変わる節目に置かれてきました。問題は、どちらへ変わる節目なのか、です。
「閑話」をやめて、本題へ
四つの字を分けると、意味はそのまま読めます。「閑話」はひまな話、むだ話。「休題」は、その話題をやめること。合わせて、むだ話はここまでにして、本題に戻るという合図になります。「それはさておき」と同じ働きです。
ですから正しい並びは、脇道が先で、閑話休題が後。たとえば業務の案内文の中で、担当者が前任者の思い出話をひとしきり書いたあとに「閑話休題。来月からの申請手続きについてご説明します」と続ける。この位置に置かれたとき、言葉は本来の仕事をしています。
もともとは中国の白話小説で使われた決まり文句で、「閑話休提」と書かれることもあります。物語の筋から外れた話を切り上げ、語り手が「さて本筋に戻ると」と宣言するときに置かれました。日本でも江戸の読本などがこれを取り入れ、「あだしごとはさておき」と読みを添えることがあったと言われています。「それはさておき」の、古風で少し改まった形。そう捉えておくと、方向を間違えません。
逆向きに使われる「閑話休題」
ところがいま目にする「閑話休題」の多くは、逆向きに使われています。「閑話休題。先日、出張先で面白い店を見つけまして」のように、ここから余談に入ります、という前置きとして置かれる形です。書き手の頭の中では「閑話」の二字が「ちょっとした話」として先に立ち、「休題」のほうは読まれないまま、「ここで一息、雑談を」という合図にすり替わっているように見えます。
この語がいつも段落の頭に置かれることも、誤解を後押ししたのでしょう。本題に戻る言葉でも、脇道に入る言葉でも、置かれる場所は同じ。そのあとに余談が続く文章を何度か読めば、「余談の前置き」として覚えてしまうのは無理もありません。
もとの意味で読む人には、「閑話休題。先日、出張先で」は、「本題に戻ります。ところで余談ですが」と言っているように見えます。戻るのか、それるのか。どちらへ連れていかれるのか分からず、読む手が一度止まります。
それるとき、戻るとき
脇道に入るときの言葉は、いくらでもあります。「余談ですが」「話はそれますが」「ところで」「ここで少し寄り道を」。どれも行き先がはっきりしていて、取り違えられる心配がありません。
戻るときは「話を戻します」「本題に戻ります」「それはさておき」。そして「閑話休題」も、この並びに入ります。使うなら、直後に本題の一文をすぐ置くこと。それだけで、戻る言葉だということが文脈から決まります。読む人がこの語を知っているかどうか不安なら、「閑話休題、本題に戻ります」と二つ重ねても、おかしくはありません。重ねることで迷いが消え、言葉の雰囲気も残せます。
書き言葉の中だけで使われる四字熟語ですから、使えば文章に少し古風な調子が出ます。それを狙うなら、「休題」の二字が「話題をやめる」ことだと、頭の片隅に置いておくだけでいいと思います。
出す前に、さっと校正
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この記事は「間違えやすい日本語⑧」の一語です。