間違えやすい日本語⑧:「さわり」「佳境」「閑話休題」の正確な意味とは?
話には、順番と場所があります。出だしがあって、脇道があって、戻ってきて、山場があって、終わる。今回の三語は、そのどこかを指して「ここ」と言うための言葉です。「さわりだけ」「佳境に入った」「閑話休題」。それぞれが話のどの場所を指しているかを取り違えると、聞いた人は違う場所に連れていかれます。
三つのうち二つは、指す場所がもとと違うほうへ広まった語。残る一つの「佳境」は、場所はそれほど違わないのに、面白さの意味が抜けていった語です。並べて見ると、ずれ方の違いがよく分かります。
「さわり」が指すのは最初ではなく「山」
「さわりだけ聞かせて」を「冒頭だけ」の意味で受け取る人が増えましたが、さわりは話や曲のいちばんの聞かせどころ、要点のことです。もとは義太夫節で、客が待ち構える聞かせどころを指した言葉でした。「触り」の字から「ちょっと触れるだけ」と連想されて、入り口の意味に動いたのだと思われます。
芝居小屋から今の会議室まで、どう歩いてきたかは「さわり」の意味と使い方で。
「佳境」は、忙しさの山ではなく「面白さの頂点」
「仕事が佳境」は、いまでは普通に通じます。ただ「佳」はよい・美しいの字で、佳境のもとの意味は物語や物事がいちばん面白くなるところ。忙しさの山場という使い方は、後から広がったものです。辞書にも載り始めているので誤用と言い切るのはためらわれますが、面白さの意味で覚えている人には「忙しいのに楽しそうでいいね」と皮肉に聞こえることがあります。
さとうきびを先のほうからかじった画家の逸話もまじえて、「佳境」の意味と使い方で書き分けの目安を整理しました。
「閑話休題」は、脇道に入る合図ではなく「戻る」合図
「閑話休題。ところで余談ですが」と続ける文章をよく見ます。けれど「閑話」はむだ話、「休題」は話をやめること。むだ話はここまでにして本題に戻る、という向きの言葉です。「それはさておき」の古風な形で、余談を始める前置きに使うと、向きが逆になります。
中国の小説の決まり文句から日本の文章に入ってきた経緯と、それる・戻るの言い分けは「閑話休題」の意味と使い方に。
まとめ:正誤早見表
| 言葉 | よくある誤解 | 本来の意味 |
|---|---|---|
| さわり | 話や曲の最初の部分 | いちばんの聞かせどころ、要点 |
| 佳境 | 忙しさの山場(後から広がった用法) | 話や物事がいちばん面白くなるところ |
| 閑話休題 | 「さて、余談ですが」の前置き | 余談をやめて本題に戻る合図 |
出典:文化庁「国語に関する世論調査」 平成28年度(「さわり」のみ。「佳境」「閑話休題」は調査対象外のため、辞書の記述をもとにしています)
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この連載の記事
- 前の回:間違えやすい日本語⑦:「世間ずれ」「浮き足立つ」「檄を飛ばす」
- 次の回:間違えやすい日本語⑨:「流れに棹さす」「二の舞」「采配を振る」
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