間違えやすい日本語⑦:「世間ずれ」「浮き足立つ」「檄を飛ばす」の正確な意味とは?
意味をまるで知らないわけではないのに、向きだけが逆になっている。今回の3語は、そういう取り違えの起きやすい言葉です。「世間ずれ」は世間から外れるのか、世間に擦れるのか。「浮き足立つ」は喜びで浮くのか、恐れで浮くのか。「檄を飛ばす」は目の前の一人に向けるのか、遠くの大勢に向けるのか。どれも、言葉の指す先がくるりと回っています。
こうした取り違えがやっかいなのは、文の中ではちゃんと通ってしまうことです。「決勝を前に浮き足立つ」も「監督が檄を飛ばす」も、文法としてはどこも壊れていないので、書いた人も読んだ人も立ち止まりません。意味が逆の人どうしが、同じ文を読んで別の場面を思い浮かべている。そういうことが静かに起きます。
3語を並べて見比べると、どこで逆になっているのかがつかみやすくなります。気になった言葉は、個別の記事で確かめてみてください。
「世間ずれ」は、漢字で書けば「世間擦れ」
「世間ずれしているから常識がない」のように、世の中の感覚から外れている意味で使われがちですが、漢字にすると「世間擦れ」です。世間でもまれて、ずる賢くなっていることで、感覚が外れているどころか、世の中の裏側まで知っている人を指します。「世間ずれしていない」が純朴だという褒め言葉になるのは、そのためです。
「から」ずれるのか「に」擦れるのか、助詞一つ分の向きの違いを、「世間ずれ」の意味と使い方でたどります。
「浮き足立つ」の足は、逃げる足
「決勝を前に浮き足立つ」と期待の高まりの意味で書かれることが増え、この意味は辞書にも載り始めています。ただ「浮き足」はかかとの浮いた、いつでも逃げ出せる足のことで、もとの「浮き足立つ」は恐れや不安で落ち着きを失い、逃げ腰になること。喜びでそわそわするのは、一字違いの「浮き立つ」のほうでした。逃げ腰の意味で読む人には逆さまに伝わるので、書き言葉では分けておきたい言葉です。
学校だよりに「浮き足立っています」と書いたら保護者がどう読むか、という話から、「浮き足立つ」の本来の意味を書いています。
「檄を飛ばす」で飛んでいるのは、声ではなく文書
「監督が檄を飛ばした」はいまでは叱咤激励の意味で通じ、辞書もこの用法を載せるようになりましたが、「檄」はもともと木札に書いた召集や告知の文書です。だから「檄を飛ばす」は、自分の主張や考えを広く知らせ、同意や決起を求めること。目の前の一人を叱る言葉ではなく、遠くの大勢に文書を送る言葉でした。
木へんの「檄」とさんずいの「激」がどこで混ざったのかは、「檄を飛ばす」の意味と使い方へ。
まとめ:正誤早見表
| 言葉 | よくある誤解 | 本来の意味 |
|---|---|---|
| 世間ずれ | 世の中の感覚から外れている | 世間でもまれて、ずる賢くなっている |
| 浮き足立つ | 期待や喜びでそわそわする(後から広がり、辞書にも載り始めた) | 恐れや不安で落ち着きを失い、逃げ腰になる |
| 檄を飛ばす | 元気のない人を叱咤激励する(定着し、辞書にも載る) | 主張や考えを広く知らせ、同意や決起を求める |
出典:文化庁「国語に関する世論調査」 平成25年度 / 平成29年度 / 令和元年度
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この連載の記事
- 前の回:間違えやすい日本語⑥:「御の字」「やぶさかでない」「気が置けない」
- 次の回:間違えやすい日本語⑧:「さわり」「佳境」「閑話休題」
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