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「世間ずれ」の意味と使い方|漢字で書けば「世間擦れ」

「世間ずれ」を漢字で書く機会は、ほとんどないでしょう。書くとすれば「世間擦れ」。この「擦」の一字が見えていれば、迷うことはあまりなかったはずです。ずれているのではなく、擦れている。言葉の向きがまるで違います。

「擦れる」は、人がもまれて変わること

「擦れる」は、物がこすれて表面がすり減ることですが、人についても使います。「人擦れした商売人」「擦れっからし」のように、世の中の荒波にもまれて純真さがなくなり、要領よく立ち回るようになった人を指す言い方です。「世間擦れ」もこの仲間で、世間でもまれて、ずる賢くなっていることを言います。

ですから「学生のころから家業を手伝っていた彼は、同い年とは思えないほど世間ずれしている」と書けば、したたかで駆け引きに慣れている、という人物描写になります。褒め言葉ではありません。少し皮肉がまじるくらいの言い方です。

反対に「世間ずれしていない」は、人を擦れさせるような経験をまだ積んでいない、純朴だということ。新人を評して「世間ずれしていなくて気持ちがいい」と言えば、こちらは好意的な一言になります。

「から」ずれるのか、「に」擦れるのか

いま広まっている使い方は、これとは別の方を向いています。「あの人は世間ずれしているから、若い人の流行がまるで分かっていない」。ここでの「世間ずれ」は、世の中の感覚から外れている、常識と食い違っている、という意味で使われています。「世間からずれている」と読んだわけです。

もとの意味は「世間に擦れている」で、世間のど真ん中でもまれた結果です。感覚が外れているどころか、むしろ世の中の裏側まで知り尽くしている。ずれて外側へ出ていくのか、もまれて内側で変わるのか。助詞一つ分だけ、向きが逆です。

なぜ外れる方へ読まれるようになったのか。たぶん、表記のせいが大きいのでしょう。「ずれ」がかなで書かれるのが普通になり、同じころに「ズレる」「ズレがある」という言い方が日常語として定着しました。一方で、人を「擦れている」と言う機会は減っています。「ずれ」と聞いて「擦れ」が浮かぶ人が少なくなれば、「ズレ」と結びつくのは自然な流れだったのだと思います。

感覚が外れていると言いたいとき

世の中の感覚と合っていないことを言いたいなら、「世間の感覚とずれている」とそのまま書くのがいちばん伝わります。もう少し表現を選ぶなら「浮世離れしている」「常識から外れている」。悪気のない浮世離れなら、「天然」のようなくだけた言い方のほうが場に合うこともありそうです。

逆に、したたかさや世渡りのうまさを言いたいときは、「世間ずれ」のほかに「海千山千」「したたか」「世渡りがうまい」があります。「世間ずれ」は読む人によってどちらにも取られうるので、書き言葉では言い換えておくほうが落ち着くかもしれません。

ついでに、よく並べられる「世間知らず」は、世間を知らず経験が浅いことで、「世間ずれ」のちょうど反対側にいる言葉です。世間知らずが長い時間をかけてもまれ、擦れていく。その行き着いた先が世間ずれ、と考えると位置関係がつかみやすくなります。

出す前に、さっと校正

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この記事は「間違えやすい日本語⑦」の一語です。