正しい敬語 / 第109回
「千円からお預かりします」はおかしい?会計で使う敬語を整理
会計で「千円からお預かりします」と言うより、「千円お預かりします」の方が、受け取った金額を直接伝えられます。「から」を足しても敬語になるわけではありません。
ただ、この一言を使った人の礼儀全体まで決め付ける必要はありません。実際の接客では、受け取った金額、つり銭、支払いの完了が分かる案内に整えることが役立ちます。
受け取った金額はそのまま言える
650円のお会計です。千円お預かりします。
この文なら、請求額と受領額の違いが分かります。「千円から」は、千円の中から代金を差し引くことを連想させる言い方ですが、預かる物は千円そのものです。金額の確認なら「から」を入れずに伝えられます。
「千円をお預かりします」と助詞の「を」を入れても構いません。忙しい会計では「千円お預かりします」と短く言うこともできます。どちらも、金額を聞き取りやすく述べることが中心です。
受け取った札の枚数も確認したいなら、「千円札を2枚、2千円お預かりします」と言えます。金額の言い方を整えるだけでなく、客が渡したつもりの額と一致しているかを確かめる一言です。速く読み上げすぎず、違うときに訂正してもらえる間を取れます。
客が追加の小銭を探しているときは、先に確定せず「小銭もお出しになりますか」と確認できます。受領額が変わったら、最後に合計をあらためて伝えます。
「預かる」と「頂戴する」をどう使う?
つり銭を渡す前なら、一度金額を預かるという言い方が分かりやすくなります。代金ちょうどを受け取ったなら、「650円、頂戴します」と支払いの受領を伝えられます。
| 場面 | 言い方の例 |
|---|---|
| 650円の会計で千円を受け取る | 千円お預かりします |
| 650円ちょうどを受け取る | 650円、頂戴します |
| つり銭を返す | 350円のお返しです |
ただし、「預かる」は会計を処理するまで一時的に受け取る意味で使われることもあり、つり銭がないと直ちに日本語の誤りだと断定する必要はありません。接客の文として使い分けるなら、支払いの段階が明確になる形を選べます。
会計の敬語は、丁寧さを増すための語を足すより、金額と受領の状態を明確にする方が役立ちます。
カードや荷物を預かる場合は返す物を明示
「お預かりします」は現金だけの言葉ではありません。確認のため一時的に受け取るカードや、保管する荷物にも使えます。
確認のため、会員証をお預かりしてもよろしいでしょうか。確認後、すぐにお返しします。
何を、何のために受け取るかを説明した例です。カードを客自身に機械へ挿入してもらう場面なら、「カードをこちらに挿入してください」と実際の動作を案内します。
荷物なら「こちらでお荷物をお預かりします。お帰りの際に、この札を係員へお渡しください」と、受取方法まで示せます。預かった物を「頂戴します」と言うと、返さない物のように聞こえる場合があるので、物の扱いに合う動詞を選びます。
間違いを指摘されたときは金額を確認する
客から「五千円渡しました」と言われた場合、「こちらでは千円と伺っています」と言葉のやり取りだけで押し返さず、受け取った金額を確認します。
失礼いたしました。お預かりした金額を確認しますので、少々お待ちください。
確認後は、「五千円をお預かりしていました。読み上げを誤り、申し訳ありません」と、分かったことを明確に伝えられます。
会計で大事なのは、定型句を滑らかに言うことだけではありません。客が金額を訂正できる間を取り、つり銭や受領の内容が一致しているかを確かめられる案内にします。