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LINTO日本語の校正と推敲

正しい敬語 / 第110回

「こちらコーヒーになります」は誤り?品物を渡すときの言い方

品物を渡すときの「こちら、コーヒーになります」は、変化するわけではないので気になる、という人がいる表現です。単に品名を伝えるなら、「コーヒーです」「コーヒーでございます」で明確に案内できます。

一方、「なります」が使われた文を全て誤りとするのは行きすぎです。料金の合計や変更後の状態など、自然に使える場面もあります。何を伝える「なる」なのかを分けます。

品物を示すだけなら「です」で伝わる

お待たせいたしました。ホットコーヒーでございます。

注文された飲み物を渡す場面なら、この文で品名と敬意を示せます。もう少し日常的な店なら、「お待たせしました。ホットコーヒーです」でも丁寧です。

「こちらコーヒーになります」は、接客で物を提示する言い方として耳にします。しかし、単純な説明に「なる」を使うことに違和感を持つ読み手もいます。自分の案内文を整えるなら、何かに変化する印象を与えない「です」「でございます」を選べます。

「になります」そのものが「です」より丁寧な敬語になるわけではありません。長さや音の改まり方だけで、丁寧さを判断しないようにします。

合計や変更を示す「なります」は使える

お会計は、合計で1,200円になります。

品物の価格を足した結果を示す文です。「1,200円です」でも言えますが、「なります」が出たというだけで機械的に直す必要はありません。

来月から、開店時間は午前10時になります。

これは変更後の状態を示しています。品名の提示とは働きが違います。「次の停車駅は青葉駅になります」のように進行に伴う案内として使われる例もあり、全てを変化の有無だけで裁けるわけでもありません。

物を指して名前を伝える文と、計算の結果や変更を示す文を分けて判断します。 気になる表現を見つけたときも、「なる」を一括置換するより、文の意味を確かめられます。

注文を確認する言葉と受渡しの言葉

飲み物を置く前に、誰の注文か確かめたいなら、「ホットコーヒーをご注文の方は、いらっしゃいますか」と尋ねられます。

ホットコーヒーは、こちらのお客様でよろしいでしょうか。

席が分からない場合の確認です。「こちらがホットコーヒーになります」と品名を示すだけでは、受け取る人の確認にはなりません。

複数の商品を渡すなら、「コーヒーが二つ、紅茶が一つです。おそろいでしょうか」と数量を読み合わせられます。商品名を述べること、誰の注文か確かめること、全部そろったか尋ねることは、それぞれ役割が違います。

客から「紅茶を頼みました」と言われたら、まず注文内容を確認します。「こちらで間違いないはずです」と言い切らず、「失礼いたしました。ご注文を確認します」と受け止められます。

案内文を直すときも言い過ぎない

接客の研修や校正で「なります」を見つけたとき、「そんな日本語はありません」と相手の言葉全体を否定する必要はありません。

ここは品名を伝える場面なので、「コーヒーでございます」にすると意味がはっきりします。

直す理由を具体的に示した説明です。客が使った表現をその場で講評する必要もなく、用件が通じているなら、接客は用件への対応を優先できます。

自分が話すときは、目の前の品を「です」で示し、変更を「なります」で伝えると整理しやすくなります。「こちらの席は予約席です」「18時から予約席になります」は、似た形でも案内する内容が異なる二文です。

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