正しい敬語 / 第108回
メールにも「拝啓・敬具」は必要?手紙の頭語と結語の選び方
通常のメールに「拝啓・敬具」は必須ではありません。宛名、挨拶、用件、結び、署名があれば、丁寧なメールを作れます。一方、改まった手紙では、書き出しの「拝啓」と結びの「敬具」を組み合わせる形が使われます。
「拝啓」だけ付ければ丁寧になるのではなく、手紙全体の形式として選ぶものです。「前略」を使うなら、結びは「草々」など、対応する語を選びます。
改まった手紙は頭語と結語をそろえる
拝啓 秋も深まり、朝夕は冷え込むようになりました。先日は会場をご案内いただき、ありがとうございました。 (用件) 今後ともよろしくお願い申し上げます。 敬具
一般的な手紙の構成を示した例です。「拝啓」が頭語、「敬具」が結語です。季節の挨拶やお礼から本文へ進み、最後に結語を置きます。
「謹啓・謹言」のように一段改まった組合せもあります。ただ、肩書の高い相手には必ず謹啓、と機械的に選ぶものではありません。どの程度正式な文書として送るかに合わせればよく、普段の問い合わせを「拝啓・敬具」で整えても丁寧です。
時候の挨拶は、必ず難しい漢語にする必要はありません。「暑い日が続きますが、お変わりなくお過ごしでしょうか」と、その季節に合う自然な文でも書けます。
頭語を選んだら、最後まで読み直して結語があるか確認します。「拝啓」で始めて、無関係な「草々」で結ぶなど、形式を混ぜないようにします。
通常のメールは宛名から始められる
山田様 先日はお時間をいただき、ありがとうございました。ご相談した展示日程について、候補日をお送りします。 ご確認のほど、よろしくお願いいたします。 佐藤
この形でも、相手への敬意と用件が伝わります。やり取りの速さを重視するメールでは、毎回季節の挨拶を挟むより、前の連絡への返事から入る方が読みやすいことがあります。
正式な挨拶状の本文をメールで送る場合など、媒体がメールでも手紙の形式を採ることはあります。メールだから「拝啓」を使ってはいけない、と逆に決める必要もありません。
日常の用件メールか、改まった挨拶状として送る文かで、形式を選びます。 紙か画面かだけで、丁寧さが決まるわけではありません。
「前略」は前置きを省くときの語
「前略」は、手紙の前置きの挨拶を省略する意味で使います。「前略」と書いた後に長い時候の挨拶を続けると、前略を置いた理由が薄くなります。
前略 昨日お話しした資料を、同封いたします。ご指定の二点を追記しましたので、ご確認ください。 草々
既に話が通じている相手に、用件を早く知らせる例です。あらたまった初めての挨拶や正式なお礼には、「拝啓」から整えるか、通常のメール形式を選ぶ方が使いやすい場合があります。
| 頭語 | 対応する結語の例 |
|---|---|
| 拝啓 | 敬具 |
| 謹啓 | 謹言・敬白 |
| 前略 | 草々 |
組合せには複数の慣用がありますが、使い慣れないものを集めるより、目的に合う一組を選べば十分です。
結語の後に重要な用件を残さない
「敬具」で手紙を閉じた後、追伸に返事の期限や金額などの主要な用件を書くと、読み落とされる場合があります。重要な情報は本文へ入れます。
ご出席の可否を、10月15日までにお知らせいただけますと幸いです。
返答が必要なら、こうした依頼を本文に明示した上で結べます。「敬具」や「よろしくお願いいたします」だけでは、何への返事を待っているか分かりません。
形式を整えた後には、相手の氏名、添付や同封の有無、日付を確認します。頭語と結語の正しい組合せに加え、用件を迷わず読める手紙にできます。