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「枯れ木も山の賑わい」の正しい使い方|人を誘うときに使うと失礼になる

部署の忘年会の案内に、幹事がこう書いたとします。「枯れ木も山の賑わいと申しますので、OBの皆さまもぜひお越しください」。にぎやかなほうが楽しい、人数は多いほどいい。そう言いたかったのは分かります。ただ、受け取ったOBの側で字句どおりに読むと、自分たちは枯れ木だと言われています。

枯れ木は、誰のこと

このことわざの枯れ木は、話している本人です。花も葉もない木でも、山に立っていれば、少しはにぎわいの足しになる。そこから、つまらないものでも、無いよりはあったほうがにぎわいの足しになるという意味で使います。自分を枯れ木に見立てて、「大したものではありませんが、数のうちに入れてください」と言う、へりくだりの言葉です。

だから使う場面は、自分が参加するときに限られます。「枯れ木も山の賑わいで、顔だけ出させてください」「枯れ木も山の賑わいと思って、末席に加えていただきます」。こう言えば、自分を低くしつつ出席の意思を伝えられます。似た役目の言い回しに「末席を汚す」があって、こちらも自分がその場に加わることをへりくだって言うときの言葉です。

手土産を渡すときの「つまらないものですが」を、相手からもらった品に向けて言う人はいません。「お目汚しですが」も、自分の作ったものにしか付けない。へりくだる言葉は、自分の側にしか向けられないという決まりがあって、「枯れ木も山の賑わい」もその仲間です。

「ぜひお越しください」とつなぐと起きること

冒頭の案内文がまずいのは、枯れ木の役を相手に振っているからです。「あなたのような枯れ木でも、来れば少しはにぎやかになりますから」。ここまで言い換えてみると、どれくらいの失礼かが見えてきます。しかも相手がOBや年配の方だと、枯れ木という言葉が年齢の話にも聞こえてしまいます。

おそらく「山の賑わい」の部分だけが耳に残って、「人が集まればにぎやかになる」というお祭り寄りの意味で受け取られてきたのでしょう。「も」の働きが抜け落ちると、「枯れ木も」が「枯れ木でさえ」ではなく「枯れ木も一緒に」のように読めてしまいます。意味の中心が「つまらないもの」の側にあることが、見えにくくなっているのだと思います。

誘う側は、別の言葉で

幹事の立場で人数を集めたいなら、ことわざを使わないのがいちばんです。「大勢のほうが盛り上がりますので」「久しぶりにお顔を見せていただければ」「〇〇さんがいらっしゃると場がにぎやかになります」。どれも相手を持ち上げる方向の言い方で、枯れ木は出てきません。

逆に、誘われた側が返事を書くときには、このことわざが出番になります。「枯れ木も山の賑わいと思いまして、出席させていただきます」。古めかしい言い回しなので、親しい相手には「頭数だけでも」「数合わせにでも」くらいの軽さが合うかもしれません。この辺は好みの問題でしょう。

もう一つ、間違えやすい相手として「枯れ木に花」があります。こちらは、衰えたものがもう一度栄えること、望みのないものに運が巡ってくることのたとえで、にぎわいとは関係がありません。「枯れ木」が出てくるので混ざりやすいのですが、向きがまったく別です。

案内文を書いていて「枯れ木も山の賑わい」が浮かんだら、その枯れ木が誰を指すことになるのかを一度考えてみる。自分を指すなら使えますし、相手を指すならやめたほうがよさそうです。

出す前に、さっと校正

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この記事は「間違えやすい日本語⑩」の一語です。