間違えやすい日本語 / 第30回
「声をあらげる」と「あららげる」はどちらを使う?
「声をあららげる」が本来の形ですが、「声をあらげる」も使われ、放送では両方が認められています。「あらげる」を聞いたからといって、すぐに読み間違いとする必要はありません。 自分の文章を標準的な形で整えるなら、「声を荒らげる」と書き、読みは「あららげる」にできます。
読み方の選択と、漢字で書くときの送り仮名は、分けて考えると迷いにくくなります。
「あらげる」は放送でも使われる形
日本経済新聞社の用語委員・小林肇氏による2026年6月の解説は、放送では「あらげる」と「あららげる」の両方が使えると説明しています。NHKでも、1991年の放送用語委員会で「あらげる」を認めたと紹介されています。
つまり、最近の話し言葉だけに現れた誤りを、放送がうっかり読み上げているわけではありません。
一方、同じ解説では、新聞の書き言葉では「あららげる」を基準に「荒らげる」と書くことを説明しています。媒体に統一の決まりがあることと、それ以外の場面で一方が使えないことは同じではありません。
朗読や読み上げの原稿で迷った場合には、依頼先の読み方の指定があれば合わせ、特に指定がなければ「あららげる」を選べます。他人の「あらげる」を誤りとして指摘する必要はありません。
「荒らげる」の送り仮名に注意
「あららげる」を漢字で書くときは、「荒らげる」です。「荒」を「あら」と読み、その後に「らげる」が続きます。
説明が二転三転し、参加者が声を荒らげた。
「あららげる」だからと、漢字の後に「ら」を二つ足した「荒ららげる」にする必要はありません。また、「荒げる」は、新聞などで用いる「荒らげる」とは送り仮名が違います。表記をそろえる文章では「荒らげる」を選べます。
平仮名で書く場合は、選んだ語形をそのまま「あららげる」または「あらげる」と書きます。漢字表記を見て「ら」の数だけを増減させると、かえって迷ってしまいます。
大声なら必ず「声を荒らげる」?
「声を荒らげる」は、怒りなどで声の調子が荒くなる様子を表します。遠くにいる人へ知らせるため大声を出した場面なら、「声を張り上げた」の方が合います。
「会場の後方まで届くよう、声を張り上げて案内した」と「説明に納得できず、声を荒らげた」では、伝わる態度が違います。読み方の揺れはありますが、単なる声の大きさと、荒々しい調子まで同じになるわけではありません。