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LINTO日本語の校正と推敲

間違えやすい日本語 / 第31回

「間が持たない」は間違い?「間が持てない」との違い

改まった文章で書くなら、慣用句として定着している「間が持てない」を選べます。「間が持たない」も広く使われますが、「持てない」と同じように標準的な形として扱われているとは限りません。

たとえば「初対面の二人では間が持たない」と書こうとしたら、「初対面の二人では間が持てない」と直せます。話題が途切れてしまうことを明確に伝えたいなら、「初対面の二人では会話が続かない」でも十分です。

「間が持てない」は会話が続かないときに使う

小学館『デジタル大辞泉』は「間が持てない」を見出しに立て、時間を持て余すことと、途切れがちな会話をつなげないことを説明しています。相手と気まずいときだけの言葉ではありません。

「開演まで一時間もあり、間が持てなかった」なら、何をして待てばよいか困っている場面。「近況を聞き終えると間が持てなくなった」なら、次の話題が出てこない場面です。どちらも、空いた時間をうまく埋められない点が共通しています。

「間が持たない」について、同辞書は文化庁の2010年度調査を補説に挙げています。当時すでに広く使われていた形なので、会話で聞いて意味が取れないような表現ではありません。ただ、その事実と、提出原稿でどちらを採用するかは分けて考えられます。用字用語の基準がある原稿では、その基準に合わせます。

会話なのか待ち時間なのかを書き分ける

「間が持てない」に直したあと、何に困ったのかが読み手に伝わるかも見ておくとよさそうです。

二人きりになると話題が途切れてしまう。
開始まで時間があり、手持ち無沙汰だった。
十分の持ち時間に対して、話す内容が足りなかった。

最後の例は、会話の気まずさより、用意した内容と時間の釣り合いが問題になっています。「発表の間が持てなかった」だけでは、沈黙したのか、早く話し終えたのかが分かりません。説明や報告では、起きたことを直接書くほうが伝わる場合もあります。

逆に、随筆や会話文で、沈黙を埋めようとして落ち着かない感じを表すなら「間が持てない」が使えます。単に暇があったというだけでなく、その時間をどう扱えばよいか困った場面に合う言葉です。

「気まずい」とは必ずしも同じではない

「間が持てない」と「気まずい」は重なる場面がありますが、常に同じではありません。親しい友人と列車を待っていて、時間をどう使えばよいか困ったなら、関係が悪くなくても「間が持てない」と言えます。

反対に、言い争った直後で気まずくても、次々と必要な用件を話していれば、会話が途切れるとは限りません。「気まずいから会話が続かない」のか、「特に話すことがない」のかを分けると、描きたい場面に近づきます。

  • 「久しぶりに会ったが、話題が尽きて間が持てなかった」:会話をつなぐことに困っている。
  • 「本を読んで待ったので、退屈しなかった」:待ち時間を過ごせている。
  • 「気まずい沈黙が続いた」:その場の落ち着かなさに焦点を当てている。

静かに過ごしただけなら、「間が持てない」と評価する必要はありません。沈黙を心地よいと感じた場面まで、困った時間に変えないようにしたいところです。

他人の話し言葉を引用するときは別に考える

インタビューの相手が「間が持たなくて」と話した場合、その発言をそのまま引用するのか、要旨として書くのかで扱いが変わります。直接引用なら、話した形を残す理由があります。要旨なら、「話題が続かなかったそうだ」と内容を整理できます。

自分の文章でどの形を選ぶかと、相手の発言をどこまで整えるかは別の判断です。読みやすさを求める場合も、元の発言の意味や調子を変えていないかを確かめられます。

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