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LINTO日本語の校正と推敲

間違えやすい日本語 / 第29回

「熱にうなされる」は誤用?「熱に浮かされる」との使い分け

高熱でうわごとを言う状態を慣用句で表すなら、「熱に浮かされる」が基本の形です。 「うなされる」は、怖い夢などを見て、眠ったまま苦しそうな声を出すことです。熱があることと、うなされていることは同時に起こりえますが、二つの言葉が同じ意味になるわけではありません。

また、何かに夢中になる比喩として使うときは、「熱にうなされる」ではなく「熱に浮かされる」を選びます。

「熱に浮かされる」と「うなされる」の違い

デジタル大辞泉の「熱に浮かされる」には、高熱でうわごとを言う意味と、前後を忘れて夢中になる意味があります。

熱に浮かされ、途切れ途切れにうわごとを言っていた。

この「浮かされる」を、音が似ている「うなされる」に替えると、同じ慣用句ではなくなります。

一方、「怖い夢を見てうなされていた」は使える文です。毎日新聞校閲センターの解説も、うなされるときは眠った状態が前提であると説明しています。目が覚めていて、苦痛で声を出しているだけなら、「うめいていた」「苦しそうな声を上げていた」など、その状態に合う語を使えます。

高熱で苦しんだことを伝えるなら

「昨夜は熱にうなされて、つらかった」と言っても、状況が推測できることはあります。ただ、それだけでは、高熱でうわごとを言ったのか、眠って悪夢に苦しんだのかまでははっきりしません。

高熱が出たことを伝えたいだけなら、「昨夜は高熱でつらかった」で足ります。眠れなかったのであれば、「熱があって、ほとんど眠れなかった」と書けます。慣用句を使うために、実際にはなかった症状まで加える必要はありません。

同じ校閲の解説も、高熱が出て、そのために悪夢を見てうなされることはありうるとしています。「熱があるときにうなされることなどない」という区別ではありません。

夢中になっている様子には「浮かされる」

初めて観た舞台の余韻が残り、熱に浮かされたように感想を語った。

この文では、体温の話をしているわけではなく、気持ちが高ぶって夢中になった様子を表しています。「熱にうなされたように」とすると、夢中だという意図から離れてしまいます。

なお、「熱に浮かされる」には、冷静さを失っている感じも含まれます。相手の熱心な取組をそのままほめたいなら、「研究に熱中している」「活動に情熱を注いでいる」の方が合うこともあります。没頭している事実だけを述べたいのか、周りが見えないほどの高ぶりを描きたいのかで、選び分けられます。

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