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LINTO日本語の校正と推敲

読めそうで読めない漢字 / 第46回

「矜持」は「きょうじ」?「きんじ」?誇りを表す難しい二文字

「矜持」は「きょうじ」と読みます。「きんじ」も慣用読みとして辞書に載っているため、それを聞いただけで誤りと決めつけるのは適切ではありません。意味は、自分の能力や仕事に誇りを持つ気持ちです。「職人としての矜持」といえば、長く培った技や仕事のあり方への自負を表します。

「きょうじ」と「きんじ」の扱い

「矜」の、誇るという意味に対応する音は「きょう」です。「持」は持つことなので、「矜持」の基本の読みは「きょうじ」になります。「教授」の「きょうじゅ」とは語尾が違い、伸ばすのは最初の「きょう」の部分です。

一方、「きんじ」は現に使われ、辞書でも慣用読みとして扱われています。「本来の読みを知りたい」なら「きょうじ」と答えられますが、「きんじと読む人は言葉を知らない」とまでは言えません。文章にふりがなを振る場合は「きょうじ」としておくと、基本の読みが伝わります。

「矜恃」という表記もあり、「恃」には頼む、頼りにするという意味があります。実際の文では「矜持」の表記を目にする機会が多く、どちらも自負や誇りの意味で読めます。

仕事を雑にできない気持ちも「矜持」

「矜持」は、自分の能力や立場に対して持つ誇りや自負です。 たとえば「見えない裏側にも手を抜かないところに、作り手の矜持を感じる」という文では、品質を守る姿勢を評価しています。単に作業が速い、評判がよいという話ではありません。

「記録を確かめずに断言することは、書き手としての矜持が許さなかった」も自然です。自分が大切にしている基準に反することはしない、という気持ちが表れます。「矜持を持つ」「矜持を保つ」「矜持が傷つく」のように使います。

ただし、「矜持」には必ず道徳的に正しい態度が含まれるわけではありません。「矜持が邪魔をして助けを求められなかった」と書けば、誇りが行動を妨げたという意味にもなります。褒め言葉専用ではなく、その自負がどう働いたかを周囲の文で読み取る言葉です。

「誇り」「自負」「自慢」と比べる

「誇り」は、能力だけでなく、人や物事を名誉に思う気持ちにも使えます。「この町の景色は住民の誇りだ」は自然ですが、「景色は住民の矜持だ」とすると、自分の力や姿勢への自負という意味から離れて聞こえます。

「自負」は、自分の能力や仕事に自信を持つことです。「準備には誰より時間をかけたという自負がある」は、矜持に近い使い方です。「矜持」はやや改まった語で、誇りを保とうとする態度まで感じさせる文にもなじみますが、二語に厳密な上下関係があるわけではありません。

「自慢」は、自分のことを他人に誇って示す行為にも使います。「受賞歴を自慢した」は口に出した行動ですが、「受賞歴を矜持とした」なら自負のよりどころにしたという話です。誇りを持つことと、それを周りへ言い立てることは分けて考えられます。

人を紹介するときは何への誇りかを添える

「矜持のある人です」だけでは、どんな点を評価しているのか曖昧です。「依頼者の知らない不具合も先に伝える。その姿勢に、修理を担う人としての矜持がある」とすると、誇りが実際の行動に結びつきます。

自分について「プロとしての矜持があります」と書くと、文脈によっては大きな自己評価に聞こえます。「仕上げの確認を省かないことを大切にしています」と行動で伝える方法もあります。どちらが正しいという話ではなく、相手に何を知ってほしいかで選べます。

読み方を問う場面では「きょうじ」を基本にしつつ、文章を読むときには、その人が何を守ろうとしているのかに目を向けると、「プライド」の一語だけでは見えにくい内容まで捉えられます。

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