間違えやすい日本語 / 第14回
「耳障りのよい言葉」と書いていい?「耳触り」との使い分け
聞いた印象がよいことを表したいなら、「耳障りのよい言葉」ではなく、「耳触りのよい言葉」または「耳当たりのよい言葉」と書けます。 「耳障り」は聞いていて不快なことなので、「よい」と組み合わせると意味がちぐはぐになります。
ただし、「耳触りのよい言葉」が、いつも素直なほめ言葉になるわけではありません。表面的には心地よいが、内容には信用が置けないという批判にも使われます。
「耳障り」と「耳触り」は意味が違う
「耳障り」は、音や言葉を聞いて気に障ることです。
録音に高い雑音が入り、耳障りだった。
この「耳障り」を「耳触り」に替えると、不快だったという評価がはっきりしなくなります。「耳触り」は聞いたときの感じそのものを指すため、「よい」「悪い」などを添えて印象を伝えます。
文化庁の解説では、「耳触り」と「耳障り」を別の見出しで載せる辞書を紹介し、「聞いた感じがよい」という意味で「耳障りがよい」と書くことは避けるよう説明しています。「耳触り」という言葉自体が存在しないわけではありません。
「耳触りのよい言葉」は内容への評価まで含む?
例えば、次の文なら「耳触り」が使えます。
耳触りのよい約束だけでなく、実現する方法も示してほしい。
ここでは、約束を聞いた印象のよさと、実現できるかどうかを分けています。「耳触りがよい」という部分だけで必ず批判になるのではなく、「方法も示してほしい」という続きによって、言葉だけでは不十分だという意味になります。
反対に、歌声を率直にほめるつもりで「耳触りのよい声だった」とだけ書くと、受け手によっては表面的な評価に聞こえるかもしれません。「心地よい歌声だった」「聴いていて落ち着く声だった」なら、ほめたい内容がそのまま伝わります。
漢字が見えない会話では言い換えも使える
会話では漢字を見せられないため、「みみざわり」が不快という意味に取られることがあります。聞こえのよさを伝えたいなら、別の言い方も選べます。
「耳当たりのよい説明」「聞こえのよい言葉」と言い換えられます。もっと具体的にするなら、「説明は分かりやすいが、根拠は示されていない」と、印象と内容を別々に述べられます。
変換候補に「耳障り」が出たからと、そのまま確定する前に、「不快だ」と言いたいのか、「聞いた感じがよい」と言いたいのかを確かめる。それで漢字を選べます。