間違えやすい日本語 / 第22回
「なし崩しに決まる」は間違い?少しずつと曖昧なままの違い
「十分に話し合わないまま、なし崩しに決まった」という書き方は使えます。「なし崩し」には、少しずつ進める意味のほか、少しずつ変えるうちに物事をうやむやにする意味もあります。
そのため、「なし崩しは少しずつ返済することだから、決定には使えない」とするのは狭すぎます。ただし、「なかったことにする」と同じ意味で、どんな取り消しにも使えるわけではありません。
「少しずつ決める」と「なし崩しに決まる」の違い
全員で条件を確認し、予算、会場、日程の順に決めた。
このように、一つずつ合意しながら進めた決定なら、「段階的に決めた」「順を追って決めた」と書く方が、意図がはっきりします。
仮の日程を知らせただけのはずが、予約まで進み、なし崩しに開催日が決まった。
こちらは、途中の小さな動きが積み重なり、正式に決めたのか曖昧なまま話が進んだ場面です。「なし崩しに決まった」が、その決まり方への不満を含む文になっています。
デジタル大辞泉の「済し崩し」は、物事を少しずつ片付ける意味と、少しずつ変化させてうやむやにする意味を分けて載せています。後者をただの誤用と片付けることはできません。
「借金をなし崩しにする」は返すこと
同じ辞書は、借金を少しずつ返す意味も載せています。「借金をなし崩しにする」と言っただけなら、借金を消してもらう、返さずに済ませるという意味にはなりません。
借金の話で誤解を避けたいなら、「毎月一定額を返済する」「返済についての話し合いが曖昧なままになった」と、起きたことを分けて書けます。前者は少しずつ返すこと、後者は話が進まないことです。二つを「なし崩し」の一語に任せると、何をしたかが曖昧になります。
決定への異議を伝えるなら足りなかった手続きも書く
「なし崩しに決まりましたね」だけでは、相手には単なる不満に聞こえるかもしれません。問題にしたいのが同意の欠如なら、次のように書けます。
参加者全員の確認が済む前に日程が確定しています。確定までの経緯を確認したいです。
これなら、何が曖昧だったのか、何を確かめたいのかが伝わります。
説明文でも「なし崩しに決まった」を使うなら、仮案がいつ確定扱いになったのか、確認がどこで抜けたのかを添えると、経緯を読み取れます。段階を踏んで合意したことまで「なし崩し」と呼ぶと、実際にはなかった不透明さを加えてしまいます。