間違えやすい日本語 / 第21回
「にやける」は「にやにや笑う」という意味で使える?
「うれしくて、ついにやけてしまった」は、今の用法として使える表現です。「にやける」を「にやにやする」「口元が緩んで笑顔になる」という意味で使うことは、現在の辞書にも載っています。 「笑う意味は全て誤用」とする説明だけでは、今の辞書の扱いを捉えきれません。
ただ、誰かの笑顔を好意的に紹介する文では、「にやける」がぴったりとは限りません。
辞書には「笑顔になる」という意味も載る
デジタル大辞泉の「にやける」は、従来の意味とは別に、にやにやする、口元が緩んで笑顔になるという意味を「俗に」として載せています。
この「俗に」は、その意味が使われていることと、改まった表現かどうかを分けて考える手掛かりになります。辞書に載ったから、あらゆる文章で同じように使えるというわけではありません。それでも、友人との会話や気軽な感想にある「にやけた」を、意味が違うと決め付けて直す必要はないでしょう。
従来の語義には、男性の身なりや振る舞いを評価する意味があります。しかし、現在の「笑顔になる」の用法を説明するときまで、「男性にしか使えない」と限定する必要はありません。誰が笑っているかだけで判断する言葉ではなくなっています。
自分の喜びには使えても人の紹介では注意する
当選のお知らせを読み返して、ついにやけてしまった。
自分の喜びが顔に出てしまう様子として読めます。少しくだけた言い方ですが、隠しきれないうれしさを表す文には合います。
一方、施設の紹介文で「スタッフがにやけながら迎えてくれました」と書くと、だらしない笑い方や、含みのある笑い方だったようにも受け取れます。親しみのある歓迎をほめたいなら、「スタッフが笑顔で迎えてくれました」の方が、その意図に沿います。
「にやける」は、笑っているという事実に、書き手の見方を添える言葉です。紹介記事で無意識に使うと、ほめたかった人への評価がずれることがあります。
素直な喜びを伝えたいなら「笑みがこぼれた」、本人にも抑えられない表情なら「思わず顔がほころんだ」と書けます。笑い方に不審さや落ち着かなさを感じたのなら、「にやにやしていた」が合う場面もあります。
「にやける」を見つけて機械的に別の語へ替えるより、喜びを描いているのか、笑い方を批判しているのかを確認したいところです。「うれしくてにやけた」と「相手の話を聞かずににやけていた」では、同じ語でも読み手に伝わる評価が違います。