間違えやすい日本語 / 第12回
「汚名挽回」は誤用なのか?「汚名返上」「名誉挽回」と比べる
「汚名挽回」は、誤用だと決め付けられる表現ではありません。認める辞書もあります。ただし、悪い評判を晴らしたいという意気込みを伝えるなら、「汚名返上」が分かりやすく、失った名誉を取り戻すなら「名誉挽回」が使えます。
「汚名を取り戻してどうするのか」と指摘されることがありますが、その説明だけで結論は出ません。「挽回」を、悪い状態から元へ戻すことと捉えれば、意味が通るためです。
「汚名挽回」を誤用としない辞書もある
小学館の『四字熟語を知る辞典』「汚名返上」では、「汚名挽回」も同じ意味の表現として扱い、「挽回」には元の状態に戻す意味があると説明しています。
一方、辞書編集者の神永曉氏による2014年の解説は、認める辞書の説明を紹介したうえで、なお慎重な立場を取っています。「汚名挽回は絶対に間違い」とも、「異論はもうなくなった」とも言えません。
読み手が表現の正誤を気にしそうな文章なら、「汚名返上」か「名誉挽回」を選べます。次に何を成し遂げたいかが、言葉への疑問に遮られずに伝わります。
汚名返上と名誉挽回はどんな場面で使う?
前の失敗によって付いた悪評を打ち消すなら、次のように書けます。
前回は準備不足を指摘された。今回は汚名返上を目指して、入念に準備した。
「汚名返上」は、付いてしまった悪い評判を退けることに重点があります。
対して、過去に築いた評価を再び得たいなら、こう書けます。
昨年は初戦で敗れた元王者が、今大会で名誉挽回を果たした。
同じ出来事を「汚名返上」「名誉挽回」の両方で表せる場合もあります。失敗のたびに二つを厳密に振り分けなければならないわけではありません。
大きな言葉にしすぎない書き方
小さな失敗について「汚名返上」と書くと、本人の意図より深刻に響く場合があります。単に一度の遅刻を取り返したいなら、「次は時間に余裕を持って到着する」で、何を改めるかまで伝わります。
おわびの文であれば、「汚名返上に努めます」より「確認手順を見直し、信頼を取り戻せるよう努めます」の方が、相手の関心に沿います。四字熟語の選択に迷ったときは、悪評を晴らしたいのか、評価を回復したいのか、それとも具体的に失敗を繰り返さないと伝えたいのかを確かめると、書く文が決まります。