正しい敬語 / 第39回
「お名前を頂戴できますか」は適切?受付で名前を尋ねる言い方
受付で名前を聞くなら、「お名前を伺えますか」と尋ねるのが適切です。「お名前を頂戴できますか」も耳にしますが、小学館『デジタル大辞泉』は、この名前の尋ね方を不適切な用法として注意しています。
名前を書いてもらいたい場合は「こちらにお名前をご記入ください」。聞きたいのか、書いてほしいのか、名刺を受け取りたいのかを、依頼する動詞で伝えます。
名前を「もらう」言い方にする必要はない
『デジタル大辞泉』の「頂戴」は、もらうことなどをへりくだって表す語です。同項目の補説では、名前を尋ねる場面の「お名前を頂戴できますか」を取り上げ、「頂戴」以外の言い方を示しています。
ここで、名前は物ではないから「頂戴」は使えない、とだけ覚えるのは不十分です。「お叱りを頂戴する」のように、形のないものにも「頂戴」は使われるからです。受付で必要なのは、その人の名前を知ることなので、「伺う」「教えていただく」と言えば用件に合います。
たとえば「ご予約の確認をいたしますので、お名前を伺えますか」と尋ねれば、名前を聞く目的も分かります。本人確認に氏名全体が必要なら、「フルネームでお名前を伺えますか」と指定できます。
口頭・記入・名刺で言い方を変える
| お願いしたいこと | 言い方の例 |
|---|---|
| 口頭で名前を聞く | お名前を伺えますか |
| 受付票に書いてもらう | こちらの欄にお名前をご記入ください |
| 読み方を確かめる | お名前の読み方を教えていただけますか |
| 名刺を受け取る | お名刺を1枚頂戴できますか |
名刺なら、実際に受け取る物を「頂戴」と表せます。ただし、名刺を持っていると決め付けず、「お持ちでしたら」と添えることもできます。
「お名前をお願いします」も通じる言い方ですが、記入台の前では、口頭で答えるのか書くのか迷う場合があります。ペンと記入欄を示して「こちらにご記入ください」と案内すれば、してほしいことがはっきりします。
聞き取れなかったときは、「恐れ入ります。もう一度お名前を伺えますか」と聞き直せます。「お名前を頂戴いたしてもよろしいでしょうか」と長くしても、尋ねる内容は明確になりません。受付で相手を待たせないためにも、必要な情報と答え方を短く伝えます。