正しい敬語 / 第38回
「こちらでよろしかったでしょうか」はいつ使える?
「こちらでよろしかったでしょうか」は、確認のために使われる表現です。「今のことを過去形で尋ねているから、必ず間違い」とは言えません。ただ、まだ相手の希望を聞いていない場面では、先に決められたように感じさせることがあります。
予約や注文を確かめ直すときに使える
予約の電話で席の希望を聞いたあと、「窓側の席でよろしかったでしょうか」と確かめる。この場面では、受け取った希望に間違いがないか、もう一度確認しています。
国立国語研究所の「○○で,よろしかったでしょうか?」は、「た」には過去だけでなく確認の用法があると説明しています。そのため、注文を復唱する「よろしかったでしょうか」を、時制の誤りだけで片付けることはできません。
「先ほど伺ったお届け先は、会社のご住所でよろしかったでしょうか」のように、何を確認しているかを添えると、相手も答えやすくなります。明日の予約を確認する文でも、すでに聞いた内容を確かめるのであれば使えます。
初めて希望を聞くなら「よろしいでしょうか」
まだ席を選んでもらっていないのに、「窓側でよろしかったでしょうか」と案内すると、以前に窓側を希望したかのように聞こえることがあります。この段階なら、「窓側のお席はいかがでしょうか」「こちらのお席でよろしいでしょうか」と提案や了承の形で尋ねられます。
相手がすでに選んだ内容を確認するのか、これから選んでもらうのかで、尋ね方を変えます。
飲み物をまだ選んでいない人に「コーヒーでよろしかったでしょうか」と聞くより、「お飲み物は何になさいますか」と尋ねるほうが、希望を自由に答えられます。ここでは敬語の「た」だけを削るより、質問そのものを変えるのが有効です。
「た」がなければ何でも丁寧になるわけではない
「こちらでよろしいでしょうか」も、相手が断りにくい流れで何度も聞けば、了承を迫る印象になり得ます。反対に、日頃の会話で使われる「よろしかったでしょうか」に、誰もが同じ違和感を持つわけではありません。
接客の言い方を決めるなら、表現を一つに固定するより、「この商品で間違いないか」「変更してもよいか」「どれを希望するか」を区別すると役立ちます。初めての提案は「いかがでしょうか」、変更の了承は「変更してもよろしいでしょうか」。何への返事が必要かが分かる聞き方を選びます。