正しい敬語 / 第30回
「お世話になりました」で関係が終わったように聞こえる?
「お世話になりました」は、関係を終わらせるときだけの挨拶ではありません。訪問や催しなど、済んだ出来事についてお礼を言う場合にも使えます。これからもやり取りが続く相手に使って構いません。
ただ、「長い間お世話になりました」とだけ書けば、別れの挨拶のように読まれやすくなります。何についてのお礼かを添えると、関係全体を締めくくったように聞こえるのを防げます。
訪問後のお礼なら「昨日は」と範囲を示す
「昨日の施設見学では、大変お世話になりました」と始めれば、見学時の対応に対するお礼だと分かります。続けて「製造工程をご案内いただき、製品への理解が深まりました」と具体的に書くこともできます。
小学館『デジタル大辞泉』の「世話」には、人のために力を尽くすという意味があります。「お世話になりました」は、そのような助力を受けたことへのお礼として使う表現です。過去の出来事を述べても、今後の関係を否定する意味にはなりません。
冒頭を「お世話になっております」としたうえで、本文に「昨日はお世話になりました」と書いても、時制が矛盾するわけではありません。普段の関係への挨拶と、昨日の出来事へのお礼をそれぞれ述べています。ただ、短いお礼のメールなら、すぐ本題に入ってもよいでしょう。
今後の予定があるならその内容を続ける
展示会の共同運営が終わった相手には、「展示会の運営では大変お世話になりました。来週の振り返り会も、どうぞよろしくお願いいたします」と書けます。終了した催しへの感謝と、次の予定が一続きになります。
具体的な予定がなければ、「今後ともよろしくお願いいたします」で締めても構いません。ただ、関係が終わらないことを示すために、毎回この一文を加えなければならないわけではありません。お礼の対象が明確なら、「丁寧にご案内いただき、ありがとうございました」だけでも十分に伝わります。
異動や退職では何が変わるかも知らせる
担当を離れる挨拶なら、「担当としての3年間、大変お世話になりました」は、その期間を締めくくる言い方になります。会社同士の取引は続くので、後任の名前や引き継ぎ日も添えれば、その後の連絡先が分かります。
同じ会社に残る異動であれば、「来月より別部署へ異動します。担当業務では大変お世話になりました」と書くと、退職との取り違えも防げます。
「お世話になりました」を現在形に直すことより、何が終わり、何が続くかを文面に書くほうが、相手の疑問に答えられます。