正しい敬語 / 第31回
「田中部長がおっしゃっています」は社外でも使える?上司の伝言を伝える敬語
取引先に自社の上司の伝言を伝えるときは、「田中部長がおっしゃっています」より、「部長の田中が申しております」とするのが基本です。社内の会話では上司を立てても、取引先への連絡では自社側の人として述べます。
社内の「おっしゃる」と社外の「申す」
同僚に「田中部長が、明日は10時に先方を訪問するとおっしゃっていました」と伝えるのは、上司の発言を尊敬語で述べた形です。
同じ内容を取引先に伝えるなら、「部長の田中から、明日は10時に伺うとの連絡がございました」や「部長の田中が、明日は10時に伺うと申しております」と書けます。発言の敬語だけでなく、訪問する主体も自社側として表しています。
相手が社外の取引先で、自社を代表して話しているときは、上司も自分側の人として伝えます。
文化庁の「敬語おもしろ相談室」第七話にも、取引先に自社の上司の話をするときの扱いが示されています。
「田中」と呼び捨てにするのが気になるとき
上司が隣にいると、名前だけで言うのをためらうこともあるでしょう。その場合は「部長の田中」と言えば、役職を示せます。「田中部長」のままにするのとは違い、誰がどの役職なのかを説明する言い方です。
相手が上司の名前を知る必要のない用件なら、「弊社の担当部長が申しております」でも構いません。反対に、担当者が複数いて取り違えそうなら、名前を省かないほうが親切です。
上司の言葉を一字一句引用する必要がない場合は、「田中より、日程変更についてご了承いただきたいとのことです」のように要旨を伝えられます。ただし、強い依頼や決定事項を勝手に柔らかくして、内容を変えてしまわないようにします。
「社外なら敬称なし」をすべてに広げない
この使い分けは、会社の一員として取引先に対応する場面を想定しています。同じ会社の人でも、個人的な交流の場で話題にする場合は、同じ関係になるとは限りません。
学校でも事情が異なります。文化庁の同じ解説は、保護者への応対で「田中先生」という呼び方が支持される例を挙げ、生徒と教師の関係が意識されることを説明しています。会社での基本を、そのまますべての組織に当てはめる必要はありません。
取引先へのメールを見直すときは、役職名の位置に加え、「いらっしゃる」「おっしゃる」の主語が誰かを確認します。それが自社の上司なら、文全体を自分側の発言として整えます。