正しい敬語 / 第121回
「お手を煩わせて」は謝罪?手伝ってもらったときの感謝の伝え方
「お手を煩わせて」は、相手に手間や世話を掛けたことに触れる言葉です。その後に「申し訳ありません」と続ければおわびに、「ありがとうございました」と続ければ感謝になります。手伝ってもらった場面で、必ず謝らなければならないわけではありません。
親切に応じてくれた相手には、してもらったことを具体的に挙げてお礼を伝えると、助けが役立ったことまで届きます。
「煩わせる」は手間を掛けること
「手を煩わす」は、人に手数や世話を掛けるという意味の慣用句です。「お手を煩わせて」はその手を相手のものとして丁寧に述べています。文字どおり手を動かす作業だけでなく、調べ物や人の紹介を頼んだ場合にも使えます。
お手を煩わせて恐縮ですが、保管場所をもう一度お確かめいただけますか。
一度探してもらった物を再び探してもらう依頼です。相手の負担に触れたうえで、何をお願いするかを伝えています。ただし、前置きを付ければどんな頼み事も引き受けてもらえるわけではありません。探す範囲や急ぐ理由も必要に応じて添えます。
普段のやり取りなら「お手数ですが」でも十分です。「お手を煩わせてしまい、大変恐縮ではございますが」と長くすると、用件が出てくるまで相手を待たせることになります。
自分の間違いで作業を増やしたとき
申込番号を誤ってお伝えし、再確認のお手を煩わせて申し訳ありません。正しい番号は、添付の申込票に記載しております。
こちらの誤りで確認し直してもらった場合は、何を誤ったかと、おわびを一緒に述べられます。「お手を煩わせました」だけでは、相手は誤りが直ったのか判断できません。訂正した内容や、確認先も示しておきます。
相手が訂正を終えてくれた後なら、「早速修正していただき、ありがとうございました」とお礼を加えます。おわびと感謝は両立するので、どちらか一つに決める必要はありません。
一方、こちらの責任ではない通常の問い合わせまで、毎回大きな失敗のように謝ることもありません。「ご確認ありがとうございます」と応じれば、協力への感謝は伝わります。
好意で手伝ってくれた相手にはお礼を
資料を探していただき、ありがとうございました。教えていただいた記録で、開催年を確認できました。
この場合は、「お手を煩わせて」を使わなくても自然です。何が助かったのかを言うことで、相手は手伝った結果を知ることができます。
お手を煩わせました。詳しく調べてくださり、本当にありがとうございます。
手間が掛かったことにも触れたいなら、このように感謝へつなげられます。「すみません」だけを何度も重ねるより、具体的なお礼を一度伝えるほうが、好意を受け取ったことが明確です。
負担へのおわびと、してもらったことへの感謝を分けて考えると、言葉を選びやすくなります。 相手が喜んで教えてくれた場面では、謝る言葉だけで話を閉じないようにします。
「お気遣い」と「お手数」は何が違う?
「お気遣い」は、相手がこちらを思って気に掛けてくれたことに目を向ける言葉です。体調を心配する連絡なら「お気遣いありがとうございます」、書類を届けてくれたなら「お届けいただき、ありがとうございます」と行動を挙げられます。
「お手数をお掛けしました」「お手を煩わせました」は、相手に生じた手間に触れます。実際にどれほど大変だったかを知らないときは、勝手に苦労の程度を決めつけず、分かっている行動への感謝にとどめてもよいでしょう。
「こんなつまらないことでお手を煩わせて」と依頼そのものを低く言うと、熱心に応じた相手も戸惑います。「急なお願いにもかかわらず、ご対応いただきありがとうございました」のように、相手が配慮してくれた点をそのまま伝えられます。