間違えやすい日本語 / 第35回
「収束」と「終息」はどちら?騒動が落ち着いたときの書き方
騒動が落ち着いてきたことを伝えるなら「収束」、騒動が終わったことを伝えるなら「終息」が合います。落ち着いた状態になったのか、終わったのか。書きたい事実によって選びます。
「説明会のあと、騒動は収束に向かった」なら、騒ぎが次第に落ち着いていく意味です。「騒動は終息した」とすると、その騒ぎは終わったという伝え方になります。読みが同じでも、報告する状況まで同じとは限りません。
「収束」と「終息」で異なる騒動の状態
光村図書の校閲担当者による解説では、「収束」を一定の状態に落ち着くこと、「終息」を物事が終わることとして区別しています。一方で、同じ事柄について、何を伝えるかによって両方の表記が使えるとも説明しています。
たとえば、問い合わせが殺到した施設からの報告です。
混乱は収束し、窓口は通常どおり運営しています。個別の問い合わせには引き続き対応します。
窓口の混乱が落ち着いたことと、対応がすべて終わったことは別です。この状況で「すべて終息しました」とだけ書くと、未回答の人は、自分への対応も打ち切られたのかと迷います。
反対に、争いが終わったことを振り返る文章で「長く続いた騒動がようやく終息した」と書くのは、意味に合っています。
「収束した」と言い切れるか迷うとき
苦情が一件でも残っていたら「収束」は使えない、といった共通の数値基準があるわけではありません。ただし、落ち着いたと判断できる材料が乏しいのに「収束した」と書けば、言葉の選び方が正しくても報告は不正確になります。
まだ推移を見ている段階なら、「問い合わせ件数は減少しています」「混乱は落ち着きつつあります」と、確認できた範囲を示せます。終了の見通ししか立っていないなら「終息した」ではなく「終息の見通しです」です。
また、「対応が収束した」では何が終わり、何が続いているのかが分かりにくくなります。受付を終えたのか、返金を終えたのか、再発防止策まで実施したのか。それぞれ「受付を終了しました」「対象者への返金を完了しました」と書くほうが、読み手は自分に関係する状況を確認できます。
「しゅうそく」の漢字を選ぶ前に、その一文で終わったと言ってよいものを確かめると、必要な表記も決まります。